2025.06.07
こんにちは。栃木県・群馬県の障がい者グループホーム「ファミリー」編集部です。
「若年性アルツハイマー」は、通常は高齢者に多い認知症が、65歳未満の若い世代に起こるタイプのことをいいます。40代~50代の「働き盛り」の方に発症することが多く、本人だけでなく、家族や仕事、生活にも大きな影響があります。
患者数は約4万人と比較的少ないですが、働き盛りの世代に発症するため、個人のみならず家族や社会への影響も甚大です。
高齢者で認知症の人は女性が多いのですが、「若年性アルツハイマー」の方は男性の方が多いのです。2009年の厚労省による調査によると、日本の「若年性アルツハイマー」の男女比は6対4となっています。
「若年性アルツハイマー」になった時に本人や家族がとるべき行動などについて述べていきます。
目次
若年性アルツハイマーの症状は、大きく「中核症状」と「BPSD(行動・心理症状:Behavioral and Psychological Symptoms of dementia)」に分けられます。
脳の異常な変化や、脳の病気や細胞がこわされることによる「中核症状」と、「中核症状」の二次的なものとして発症する「BPSD(行動・心理症状)」に「若年性アルツハイマー」は二分されます。「BPSD」は、ストレスやまわりの状況によって発症しやすくなるとされており、必ず発症するというものではありません。
【中核症状(認知機能障害)】
【BPSD(行動・心理症状)】
若年性アルツハイマーを発症すると、平均で8年ほどの寿命と言われています。ただし進行には個人差があり、特に若い人ほど進行が速い傾向があります。
現在のところ、完治させる薬はありません。症状をやわらげる薬(例:中核症状にはアリセプト、BPSDには抗精神病薬など)を使いながら、生活の質を保つ工夫が大切です。
「若年性アルツハイマー」の人は、会社などで最も活躍している世代の人が年齢からして多く、発症した場合の生活への影響は甚大です。
若年性アルツハイマーと診断された場合は、以下のような対応が考えられます。
【職場に相談する】
勤務時間を短くしたり、仕事内容を調整してもらったりできます。今の職場が難しい場合、障害者雇用制度を活用するという選択肢もあります。
自分でできる範囲の仕事で家計を支えるために働き続けるという割り切った考え方を持つことも必要でしょう。
【生活習慣を改める】 「血管性認知症」は、脳梗塞や脳出血を原因とする認知症で、「若年性アルツハイマー」につながるものです。
栄養バランスの取れた食事、質の良い睡眠、適度な運動などが、進行を遅らせる助けになります。過度な飲酒や喫煙は避けましょう。
【公的制度を利用する】 医療費や生活費の負担を減らすために、障害年金・自立支援医療・障害者手帳など、さまざまな制度を利用できます。
・障害年金(社会保障制度) ・障害者手帳(社会保障制度) ・自立支援医療(社会保障制度) ・医療費・介護費の自己負担の減免(社会保障制度) ・住宅ローン返済相談(社会保障制度) ・運転免許の返納(義務) ・日常生活自立支援(社会保障制度) ・成年後見(社会保障制度) ・介護保険(介護サービス) ・障害者福祉(介護サービス)
若年性アルツハイマーの方は、体が元気で意欲もあるため、できないことが増えていくことに対して強いストレスを感じやすくなります。
まわりの人は、本人のできる部分を生かせてあげられるようなライフスタイルを持続させ、本人が自信をなくすような言動や行動をしない配慮が必要です。
認知症であることを本人に知らせるべきかは、家族のなかでも議論になることが多い問題でしょう。本人に知らせると決めたら、家族も一体と向かいあっていく覚悟が必要です。バリバリに仕事ができている段階で告知を受けると、精神的なショックが大きく、うつが急速に進むおそれがあります。とはいえ、本人がまだ正常な判断ができる段階で告知をおこなっておけば、本人の意思や希望をチェックしながら治療を行うことができるのです。
若年性アルツハイマーの患者さんを支えるためには、以下の点に留意することが大切です。
「若年アルツハイマー」に対して、現在国が進めている「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」では、「若年性アルツハイマー」の人へのサポートが補強されつつあります。「若年性認知症コールセンター」が全県に設けられており、そのほかにも地域包括支援センターや認知症疾患医療センターなどの相談窓口があります。生活や介護のことで悩んだら、まずは相談してみましょう。また、全国各地の認知症カフェや家族の集いなどに参加して、同じような悩みを持つ人と交流をもつのもいいのではないでしょうか。
若年性アルツハイマーは、まだ働いている世代にも起こりうる病気です。早く気づき、適切な治療やサポートを受けることで、進行をゆるやかにし、より良い生活を送ることができます。
「もしかして…」と思ったら、ひとりで悩まずに早めに医療機関や相談窓口に相談してください。