2026.04.20
こんにちは。栃木県・群馬県の障がい者グループホーム「ファミリー」編集部です。
咀嚼音や貧乏ゆすりの音、キーボードを叩く音…。誰かにとっては気にならない音なのに、自分だけ異常なほどイライラしたり、怒りがこみ上げてきたりする――そんな経験はありませんか?
それは「ミソフォニア(音嫌悪症)」と呼ばれる状態かもしれません。この記事では、ミソフォニアとは何か、なぜ起こるのか、聴覚過敏との違い、そして日常でできる対処法まで詳しく解説していきます。
目次
ミソフォニアとは、咀嚼音や呼吸音など、特定の日常音を聞くことで、過剰な嫌悪感や怒りを感じてしまう状態です。近年になって知られるようになった比較的新しい概念で、研究もまだ発展途上の段階にあります。
反応しやすい音の例としては、以下のようなものがあります。
こうした、ほとんどの人が意識せずに聞き流せるような音が対象になるのが特徴です。ちなみに「ミソフォニア(Misophonia)」という言葉は、2000年頃にギリシャ語の「misos(憎しみ)」と「phone(音)」を組み合わせてつくられた比較的新しい造語です。歴史上の人物にも、この症状に近い記録が残っているという説もあります。
大切な補足として、ミソフォニアは現時点でDSM-5(アメリカ精神医学会の診断基準)などに正式な病名として掲載されているわけではなく、世界中の研究者が原因やメカニズムの解明を進めている段階の概念です。そのため「病気かどうか」を断定することは難しいのですが、実際に強い苦痛を感じている人が数多くいることは、複数の研究でも確認されています。
ミソフォニアの症状は人によってさまざまですが、主な症状は以下の通りです。
音を立てている相手に対して「消えてほしい」「叩きたい」というような強い感情、時には殺意に近い感情を抱いてしまうこともあります。これは決して珍しいことではなく、ミソフォニアの当事者の多くが経験する反応だといわれています。そう感じてしまう自分を責める必要はありませんが、実際の行動に移すことがないよう、後述する対処法で音そのものから距離を取る工夫が大切です。
ミソフォニアの中でも、とくに多く報告されるのが「咀嚼音」への反応です。「咀嚼音が気持ち悪い」「人の咀嚼音にイライラする」と感じる人は少なくありません。
これは、咀嚼音が「近い距離で」「繰り返し」「予測できるタイミングで」聞こえてくる音であることが関係していると考えられています。とくに家族など身近な人が発する音に対して反応が強くなりやすい一方、自分自身が立てる咀嚼音には反応しない人が多いのも特徴のひとつです。音の大きさそのものよりも、「誰が」「どんな状況で」出している音かが反応に影響するのです。
ミソフォニアの原因はまだ完全には解明されていませんが、近年の脳科学研究によって、いくつかの手がかりが見えてきています。
英ニューキャッスル大学などの研究チームがfMRI(脳の活動を調べる装置)を使って調べたところ、ミソフォニアのある人は、感情を処理する「前部島皮質」と、感情をコントロールする「前頭葉」との間の連携のしかたが、そうでない人と異なることがわかってきました。トリガーとなる音を聞いたときに、この2つの領域が通常よりも強く活動し、「この音は重要で、無視できない」という信号が脳の中で強く出てしまっている状態だと考えられています。
つまり、「気にしすぎ」なのではなく、脳の仕組み上、意識をその音から引き離すことが難しくなっている、というのがミソフォニアの実態に近いといえそうです。
もうひとつの側面として、「食事中は音を立てるべきではない」「作業中は静かにするべきだ」といった、こうあるべきだという規範意識の強さとの関連も指摘されています。
ミソフォニアは軽症から重症まで症状の幅が広く、多くの人は病院での治療が必要なほどではないとされています。そのため実際には、「近くで食事をしないでください」とお願いしたり、ヘッドフォンで音を遮断したりするなど、自己防衛的な対処で日常をやりくりしている人が多いのが実情です。
ミソフォニアと似た言葉に「聴覚過敏」や「音恐怖症」がありますが、それぞれ意味合いが異なります。
聴覚過敏は、あらゆる音を過敏に感じてしまう状態です。周囲の音を取捨選択できず、大きな音や鋭い音全般に動揺しやすくなります。
ミソフォニアは、「特定の音」に対してのみ、異常な怒りや不安を感じるのが特徴です。音の大小は関係なく、反応の強さも聴覚過敏と比べてかなり大きいことが多いとされています。
なお「音恐怖症」という言葉は、日本語では文脈によってミソフォニアとほぼ同じ意味で使われることもありますが、本来「音そのものへの恐怖」を指す言葉で、片頭痛にともなう音への過敏さなど、やや異なる文脈で使われる場合もあります。言葉の使われ方に幅がある点は知っておくとよいでしょう。
ミソフォニアの人が反応しやすい音の特徴としては、大きく2つの傾向があります。
いずれも「繰り返される音」である点が共通しています。
ミソフォニアは、単なる「わがまま」や「神経質」と誤解されることが少なくありません。しかし、当事者は実際に大きな苦痛を抱えています。
ミソフォニアの人が不快に感じる音は、多くの場合40〜50db程度の、環境省の騒音ガイドラインでも「日常生活で望ましいレベル」とされる音量です。そのため、周囲の人には「気のせいだ」「過剰反応だ」と受け取られやすく、理解を得にくいという難しさがあります。
周囲の人がミソフォニアについて正しく理解し、適切なサポートを行うことが、当事者の孤立を防ぐうえでとても重要です。
以下のような傾向がいくつも当てはまる場合、ミソフォニアの特徴に近い状態かもしれません(これは診断ではなく、あくまで振り返りのための目安です)。
いくつか当てはまる場合でも、それだけで診断が確定するものではありません。気になる場合は、後述する専門機関に相談してみることをおすすめします。
ミソフォニアには確立された根本的な治療法はまだありませんが、以下の方法で症状を軽減できることがあります。
すべての苦手な音を生活からなくすことは現実的ではありません。「耐えられない苦痛」なのか「単に苦手」なのかは本人にしかわからないからこそ、無理に我慢するのではなく、耳栓やイヤホンで自己防衛する、その場を離れるといった対処法を、状況に応じて選んでいくことが大切です。
職場や周囲の理解を得たい場合は、医療機関で診断書を作成してもらうことも一つの方法です。「気になる音がある」と口頭で伝えるだけでは、わがままと誤解されてしまうこともあります。自分の状態を正しく認識したうえで、周囲に伝えていくとよいでしょう。
症状によって日常生活に支障が出ている場合は、耳鼻咽喉科や心療内科、精神科などの専門医に相談することをおすすめします。
世界各国の研究者がミソフォニアの原因やメカニズムの解明に関心を寄せていますが、まだ結論が出ていないのが実情です。それでも、認知度は年々高まってきています。「もしかして自分も」と思い当たる方は、一人で抱え込まず、専門機関に相談することから始めてみてはいかがでしょうか。
Q. 咀嚼音が気になるのは、みんなそうなのですか?
A. 多かれ少なかれ、咀嚼音が気になった経験がある人は少なくありません。ただし、強い怒りや苦痛を感じ、日常生活に支障が出るほどの場合は、ミソフォニアの特徴に近い状態である可能性があります。
Q. 音恐怖症とミソフォニアは同じ意味ですか?
A. 日本語では同じ意味で使われることも多いですが、本来「音恐怖症」はやや異なる文脈(音そのものへの恐怖)で使われる言葉です。厳密な区別よりも、まずは「特定の音に強く反応してしまう」という自分の状態を把握することが大切です。
Q. ミソフォニアの自己診断はできますか?
A. 現時点で確立された正式な診断基準はなく、簡易な自己診断だけで判断することは難しいのが実情です。気になる傾向がある場合は、本記事のチェック項目を参考にしつつ、耳鼻咽喉科や心療内科などの専門機関に相談することをおすすめします。
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