2021.09.17
目覚まし時計の音で目が覚めたはずなのに、また眠ってしまっていたなどという経験はありませんか。決して仕事をないがしろにしているわけではなく、やる気はあるのになかなか遅刻が直らないということがあります。けっして怠けている訳ではなく、自分では起きようという思いがあるのに起きられない場合は起立性調節障害の可能性があります。起立性調節障害は思春期の子どもに多いのですが、ストレスなどの影響で大人もなることがあります。
この記事では起立性調節障害の症状、治療方法や日常生活での向き合い方などについて詳しく解説していきます。
目次
起立性調節障害とは、自律神経のバランスが崩れて発症する病気です。朝起きられない、めまい、頭痛、動悸(どうき)立ちくらみなどが発症します。とりわけ午前中に症状が現れることが多く、時間通りに起きることができなかったり、午前中気分がすっきりしなかったりすることが多いのです。立ちっぱなしの時やエレベーターの中にいるとめまいや立ちくらみが生じます。少し階段を登ったり、歩き回ったり動いたりしただけでも動悸や息切れが生じ、乗り物に酔いやすかったりします。いつも体がだるかったり、疲れやすかったりして食欲がないこともあり、重症化すると生活に支障が生じてしまうのです。
起立性調節障害には4つのサブタイプがあります。
起立性調節障害の大部分がこのタイプです。朝起きた時や入浴中などにだるさや立ちくらみを感じます。原因は血圧の低下が大きいため遅れ脳への血流が悪くなるためです。
血圧低下を伴わずに心拍数が急激に増え、動悸が激しくなり、冷や汗をかいたりします。起立直後性低血圧に次いでよく見られる症状です。
突然が血圧下がることにより脳貧血となって気が遠くなったり意識を失ったり、最悪の場合は心肺停止となります。立っている時に起こるもので、顔面蒼白、冷や汗、除脈、けいれん発作といった症状を伴うものです。
立ち上がった瞬間、血圧が下がって倦怠感、頭痛、ふらつき、動悸などが起こります。4つの中では比較的発症頻度は少ないタイプです。
自律神経のバランスが乱れることが起立性調節障害の原因とされていますが、自律神経のバランスの乱れの原因となるものはストレスです。起立性調節障害の症状が仕事に支障がない程度の軽いものである場合でも治療を受けて、放置することなく生活習慣の改善をすすめれば初期段階であればバランスを取り戻すことができます。従って早めに対処することが大切です。
初期段階では、血圧の変動や肩こりや頭痛の軽い症状緒があります。時間の経過とともに症状が進むと体が抵抗するため一時的に調子が良くなったように思われることもあります。
しかし、体の許容範囲を超えてストレスが蓄積されると、自分ではコントロールできません。うつ病や不安障害といった精神疾患を引き起こしてしまうのです。精神的な苦痛からアルコール依存症、不眠症などに発展することもあります。
治療を受けながら仕事を続けるには、ストレスの度合いを把握しつつ適切に対処するセルフチェックの必要があります。また治療には個人差はありますが、長期に及ぶ場合があります。治療と仕事を両立させるためにも仕事環境を調整しなければなりません。上司や同僚といった職場の人に相談して理解や配慮を得ることが必要です。
病院に通うため、勤務時間中の外出が必要だったり、夜間勤務や長時間の残業を控えて業務量も少なくして欲しかったりといったことを明確に伝え、かつ配慮を必要としている理由も正しく伝えることが大切でしょう。単なる体調不良ではなく治療が必要な疾患であること、そして医師の治療方針なども説明しておくことです。
職場での理解が得られにくい場合や環境調整を行った上でも仕事がつらい場合は産業医や社内カウンセラーなどの社内の相談窓口に相談して職場の状況に応じた対処方法をアドバイスしてもらうようにしましょう。
起立性調節障害は、なかなか完治しないので症状とうまくつきあっていくことが重要です。そのために、一般的には非薬物療法を行い、それだけでは改善が難しい場合に薬物療法を併用します。また、体および心理ストレス双方に対する環境調整や治療が必要です。
非薬物療法とは、患者に起立性調節障害の発生発症の理由を説明し、心理的負担や治療の際の不安を取り除き、日常生活や食生活での注意点を指導するものです。起立性調節障害は体にいろんな症状が現れる病気であることを本人や家族、周囲の人に理解してもらいます。仕事に影響がある場合は、職場の人に環境調整の配慮を求めます。ストレスを強く感じている場合は臨床心理士や専門の医師により心理療法を用いたカウンセリングを受ける場合もあるのです。それ以外にも、血流改善のために腹部バンドや圧迫ソックスなどの装具を着用する方法もあります。
薬物により血管を収縮させたり、交感神経の作用を高めたりして血圧を上げるのが目的です。効果が出てくるまでにおおむね数週間~数カ月時間要します。具体的な薬物について説明します。なお、下記以外にも効果のある漢方薬もあります。
(1)ミドドリン塩酸塩 血管を収縮させることにより血圧を上げる働きがあり、起立直後性低血圧と対位性頻脈症候群向けの最初に使われる薬です。
(2)アメジニウムメチル硫酸塩 交感神経の機能を促進により血圧を上昇させるものです。起立時に頻脈を起こす副作用があります。
(3)プロプラノロール アドレナリンなどの作用を弱めることにより心拍数を低下させ、血管を収縮させます。対位性頻脈症候群に効果的です。
日常生活での注意点としては、検査の結果起立性調節障害と診断されたら今の環境を見直し、ストレスの多い場所や状況から距離を置くことです。自律神経をいたずらに刺激せず、悪化させないことが大切でしょう。また、水分や塩分を摂取して血圧を上げることも効果的です。摂取する水分は1日1.5~2L、塩分は標準よりやや多めにおおむね10g~12gが理想です。
さらに、寝た状態や座った位置から急に立ち上がらないようにしましょう。朝起き上がる前に布団に中でストレッチを行ない、ゆっくり30秒以上かけてゆっくりと立ち上がるようにします。頭と心臓を可能な限り同じ高さにして起き上がることがポイントです。頭を下げたまま歩き始めるようにしましょう。
起立性調節障害は環境による自律神経のアンバランスによって発症する病気です。気持ちだけでがんばろうとしても回復できるものではありません。
朝体が起きられないとか、立ちくらみがするとか違和感があったらまずは病院に行きましょう。何科に行けばいいのかというと、内科や循環器科、精神科などの専門機関を一度受診することをおすすめします。
けっして、自分自身を責めないようにしましょう。適切な治療を行えば回復する可能性は十分にあります。長い目で見て無理はせず自分に合った生活リズムや体調を管理するコツをみつけることが大切です。