ホーム > ニュース > 日常生活動作(ADL)とは?評価方法と低下予防策をわかりやすく解説
2022.10.06
高齢化社会を迎え、要介護状態となる高齢者や、高齢者の介護状態の悪化の予防を図る取り組みの必要性が叫ばれている昨今です。
高齢者や要介護者の健康の度合いを知るために、「日常生活動作(ADL)」と呼ばれる介護用語があります。
介護状態の悪化の予防を図るためには、「日常生活動作」を維持する必要があると言われています。
この「日常生活動作」とはいったいどのような指標なのでしょうか。
本記事では「日常生活動作」について、概要、評価方法、低下予防策などについてわかりやすく解説します。
目次
最低限、日常生活を送るうえで欠かすことのできない動作は「日常生活動作(ADL)」と定義され、「ADL」は英語の「Activities of Daily Living」を簡単にした表現です。
高齢者や障害者が、日常生活に最低原必要な動作をどれだけ行うことが可能かの指標になります。
具体的な「日常生活動作」としては、以下のものがあります。
・食事
・排泄
・入浴
・【起居動作】 寝返りしたり、起き上がったり、立ち上がったりする
・【移乗】 車いすへ乗り移る
・【移動】 歩行・車いすでの移動
・【更衣】 衣服を着たり、脱いだり、着替えたりする
・【整容】 洗面したり、歯をいたり、化粧したり、髭を剃ったりする
「日常生活動作」の評価が高くなるほど、自立して生活を送ることができます。
反対に、「日常生活動作」の評価が下がるほど、周りの支援・介護・看護・医療が必要ということになります。
「日常生活動作」の評価低下にともなって、身体機能の低下や生活習慣病を招き、その結果、再び「日常生活操作」が低下するという悪循環に陥るでしょう。
以下の2つの動作に「日常生活動作」は分類されます。
1.基本的日常生活動作(BADL)
人間らしい生活を送るためには最低限欠かすことのできない動作は「基本的日常生活動作(BADL)」と定義されます。
例えば、起き上がったり、立ち上がったりするなどの動作そのもののことです。
2.手段的日常生活動作(IADL)
少し複雑な、判断を必要とする日常の動作は、「手段的日常生活動作(IADL)」と定義されます。
複数の項目を組み合わせた動作であり、例えば「料理」という動作は、買い物や調理、配膳などの動作を組合せたものです。
「手段的日常生活動作」の評価が下がってくれば、続いて「基本的日常生活動作」の評価も下がってくるという流れになります。
具体的には以下のような組合せになります。
・【掃除】掃除機をかける+水拭きする+窓拭きする
・【料理】献立をする+買い物をする+調理をする+給仕をする
・【洗濯】洗濯機を回す+洗濯物を干す+洗濯物をたたむ
・【買い物】必要なものを選定する+買い物に行く+レジで会計をする
・【電話対応】相手の電話番号を調べる+相手に電話をかける
・【スケジュール】予定通りに段取りをつける+実行する
・【服薬管理】薬の量を守る+服用時間を守る+服薬する
・【金銭管理】金融機関で手続きをする+ATMでのお金の出し入れをする
・【交通機関の利用】最適な交通機関を選ぶ+券売機で切符を買う
「日常生活動作」と「手段的日常生活動作」の評価方法をご説明します。
1.日常生活動作(ADL)の評価方法
「BI」と「FIN」の2つの評価方法があります。
1-1.BI
英語の「Barthel Index」を簡単にした表現です。
要介護者や障害者の「日常生活動作」を評価する方法で、不能~自立まで最大4段階、100点満点で採点され、高い得点であるほど、自立度も高いと判断されます。
・整容
・着替え
・移動・
・階段
・歩行
・トイレ
・排便コントロール
・排尿コントロール
② 判定基準:
15点、10点、5点、0点の4段階
1-2.FIM 英語の「Functional Independence Measure」を簡単にした表現です。
本人が日々、実際に行っている「日常生活動作」の評価方法で、大きく分けて「運動項目」と「認知項目」の2つの評価項目があります。
運動項目は13あり、認知項目は5つで合計18項目です。
1項目7点満点で、合計得点が高くなるほど、自立度も高いと判断されます。
・【排泄コントロール】 排便、排尿の制御
・【移乗】 椅子や車椅子やベッドなどに乗った、トイレや浴槽やシャワーに行ったりする
・【移動】 歩行したり、車いすで移動したり、階段の上り下りをする
・【セルフケア】 清拭や食事、トイレ動作を行ったり、上下半身の着替えや整容を行ったりする
・【理解】 視聴覚を理解する
・【社会的認知】 視覚や聴覚を理解したり、非音声や音声を表出したりする
・【コミュニケーション】 問題を解決したり、社会的交流を深めたり、記憶にとどめたりする
1点…全介助
2点…最大介助
3点…中等度介助
4点…最少介助
5点…監視・準備
6点…修正自立
7点…完全自立
2.手段的日常生活動作(IADL)を評価する方法
「Lawtonの尺度」と「老研式活動能力指標」の2つの評価方法があります。
2-1.Lawtonの尺度
3~5段階で8項目を採点し、合計点が高得点数になるほど自立度も高評価です。
・家事、移動
・買い物、電話使用、食事の準備
・金銭管理、服薬管理
できる(1点)、できない(0点)
2-2.老研式活動能力指標
13項目あって、「はい」だと1点、「いいえ」だと0点で、合計得点が高得点になるほど「手段的日常生活動作」は高評価ということになります。
・バス・電車など公共交通機関を利用する
・食事の用意をする
・預貯金の出し入れをする
・請求書の支払いをする
・買い物をする
・新聞を読む
・新本や雑誌を読む
・書類を記入する
・健康についての関心がある
・入院中の人のお見舞いに行く
・友人宅を訪問する
・相談に乗る
・若い人に話しかける
はい(1点)、いいえ(0点)
「日常生活動作」を低下させないための予防策をご紹介します。 ぜひ、日々の生活に積極的に取り入れましょう。
1.運動
散歩などの軽い運動を行って、体力や筋力、関節の柔軟性を保つようにしましょう。
体力や筋力が回復すれば、運動する意欲も高まってきます。
なるべく歩いて買い物に出かけたり、エレベータ―を使わず階段を使ったりするだけでも、体力・筋力を維持することができるでしょう。
2.食生活の見直し
高齢者は食欲の後退にともなって、食事も偏りがちになります。
栄養バランスのとれた食事が体力の維持には欠かせません。
特に、たんぱく質は筋肉の材料となるため、積極的に摂りようにしましょう。
運動後にたんぱく質と糖質(炭水化物)をセットで摂るとより効果的です。
3.趣味や外出の機会を増やす
自室に引きこもらず、外出したくなるような趣味を持ち、積極的に外出する機会を増やすようにしましょう。
4.リハビリを実施する
筋力・体力を維持するためにも、リハビリ施設に出かけたり、訪問リハビリを利用したり、ホームエクササイズを行ったりするようにしましょう。
5.コミュニケーションの機会を増やす
同じ趣味を持つ仲間を増やしたり、リハビリで他の利用者やトレーナーとの交流を深めたりするなど、他人とのコミュニケーションの機会を増やすことが大切です。
「日常生活動作」は、基本的な手足や体の動きを基本とするものです。
そういった手足や体の動きに必要な筋力やバランスをいつまでも衰えさせないことが大切です。
そのためにも、日頃から自分でできることは極力自分で行うようにしましょう。
さらに、毎日、活動的に生きることで、体力を維持することも「日常生活動作」の評価をキープするためのコツと言えるでしょう。
まわりの人のサポートに甘んじていると、本来なら自力でできる日常生活もできなくなり、やがて認知症などのさまざまな病気を併発し、要介護状態となってしまうおそれがあります。
「日常生活動作」を維持するためには、食生活を見直したり、適度な運動をしたりなど、自分でできることから実施して、心も体もいつまでも健全な状態を保つようにしましょう。