2024.02.20
こんにちは。栃木県・群馬県の障害者グループホーム「ファミリー」編集部です。
アセスメントシートは、医療や介護現場の他、ビジネスや教育現場でも広く活用されています。 このアセスメントシートはどのような意義や作成方法があるのでしょうか。 さらに、医療や介護現場、ビジネスや養育現場でのどのように活用できるのでしょうか。
この記事では、アセスメントシートの役割や作成方法、さまざまな現場での具体的な活用事例について解説します。
目次
アセスメントシートの定義 アセスメントとは翻訳すると「評価・評定・査定」という意味で、「利用者の状況の情報を収集し分析して、利用者の要求や解決すべき課題を明らかにするために評価や査定を行うこと」という定義になります。 言い換えれば、利用者であるクライアントの状況や要望などから生活上の問題点や解決すべき課題をピックアップするための書類であり、クライアントや家族を支援するためのケアプランの作成に必要不可欠なものです。
アセスメントシートの種類と特徴 以下の7つの種類のものがあります。
1.包括的自立支援プログラム ケアプランを作成する際にヒアリングを行ったケアマネージャー自身の意見も含めて作成します。 要介護認定に必要な認定調査票と連携するのが特徴です。
2.居宅サービス計画ガイドライン クライアントの心や身体の強さを確認してケアプランに反映させ、自分自身で課題を解決できるようになるための支援をします。
3.MDS-HC方式 施設事業者、在宅介護事業者の両方の情報を収集して分析する場合の基準として活用されています。
4.R4 全国老人保健施設協会が持つ介護老人保健施設の情報を分析し、ICFと呼ばれる国際的分類を用いて、5段階の評価(絶対評価)をします。
5.ケアマネジメント実践記録方式 クライアント自身・家族の意見や希望に加えて、アセスメントを担当した職員が考える課題も記入します。
6.日本介護福祉会方式 要介護者のためのアセスメントシートを作るうえで重要な、健康・衣食住・社会関係・加増関係といった項目を分析できます。
7.日本訪問介護振興財団版方式 高齢者のみならず幅広いクライアント層に適用できる方式です。 何回でも記入できるので、経緯をチェックしやすいという特徴があります。
クライアントの生活環境や、心や身体の状態、希望などを把握するためにアセスメントシートが活用されます。 アセスメントシートで収集できた情報を、関係者間で確認・共有することによって、最適な目標設定や介護サポートの方針を決めるケアプランの策定が可能です。 さらに、クライアントの情報を本人や家族、他の職種と共有し、医療や介護、採用、人事評価、学習などのクオリティのアップにつなげます。
項目の選定 アセスメントシートには記載すべき項目が全部で23あります。 そして、23の項目は、大きく「基本情報に関する項目」と「課題分析に関する項目」の2つに分類されます。 「基本情報に関する項目」は下記の①~⑧です。 ①基本情報 ②生活状況 ③利用者の介護保険などの被保険者情報 ④現在利用している介護サービス等の状況 ⑤障害高齢者の日常生活自立度【ランクJ~C】 ⑥認知症高齢者日常生活自立度【自立ランクI~M】 ⑦主訴 ⑧認定情報
「課題分析に関する項目」は下記の⑨~㉓です。 ⑨課題分析(アセスメント)理由 ⑩健康状態 ⑪ADL(日常生活動作)に関する項目 ⑫IADL(手段的日常生活動作)に関する項目 ⑬認知 ⑭コミュニケーション能力 ⑮社会との関わりに関する項目 ⑯排尿・排便 ⑰褥瘡・皮膚の問題 ⑱口腔衛生 ⑲食事摂取 ⑳問題行動 ㉑介護力 ㉒居住環境 ㉓特別な状況
記入方法 アセスメントシートの書き方に決まった型はありません。 クライアントや家族から聞き出した内容をもとに、下記の点を意識して文章を作成します。 ・ 現状の問題の原因は何か、またどんなリスクがあるのか、どんな対策が必要か ・どこまでは1人でできて、どこからが1人でできないか ・本来はできるのに拒んでいることや、やっていないことはないか ・最終的な希望は、そのために何が必要か ・客観的な事実と主観を同一文の中に混在させない ・いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように(5W1H)を明確に書く ・息子は次男など、主語はより具体的に記載する ・略語は、一般的に知られている言葉にする
評価方法 例えば看護におけるアセスメントの場合は、問診、観察、測定や検査の結果などの「客観的情報」と、クライアント本人が感じている痛みや不安・不調などの「主観的情報」を交えてクライアントの状態を正確に分析・評価します。
医療や介護現場でのアセスメントシートの活用事例をご紹介します。
患者の病状評価 アセスメントシートを使って医療者の問診や観察から得た「客観的情報」と、対象者から得た「主観的情報」の両面から、看護上の問題点や課題を理論的に分析。 分析結果を踏まえて、看護計画が策定・実施されます。
介護 アセスメントシートを使って、介護対象者本人や家族から心身の状態や日常生活の状況をヒアリングし、要望や課題を明確化することで個々のニーズに応じた最適なケアプランを作成します。
認知症 認知症患者が特別養護老人ホームへ入居することになった際に、アセスメントシートを使って家族によるこれまでの介護の内容の聞き取り結果を分析し、今後の最適な支援計画を策定します。
ビジネスや教育現場でのアセスメントシートの活用例をご紹介します。
採用面接時の人物評価 人材アセスメントとは、応募者の能力や資質を数値化し、客観的に適性を評価することを指します。 この人材アセスメントを採用面接に活用することが可能です。 アセスメントを活用した採用なら、応募者の特徴を数値化することで、客観性があり納得感のある結果を得ることができます。
社員の能力評価 従来の人事評価は、従業員を上司が評価するもので、現場での仕事ぶりのみを見て評価するため、その人材が持つ潜在的な能力を見出すことは困難でした。 しかも、主観が介入し公平性に欠けることから、従業員からの不満が出ることも少なくありません。 社員の能力評価に人材アセスメントを活用すれば、その人材を第三者が客観的に評価するため、信頼性の高い評価が可能です。
学習者の学習レベル評価 アセスメントは教育現場でも活用されています。 学習者の学習実態を把握し、適切なフィードバックを行いながら、学習活動の成果を学習目標に照らして評価し、最終的な学習の目標を達成可能にします。
アセスメントシートを活用する際に注意すべきことはどういった点でしょうか。
個人情報 例えば、介護事業者の場合、クライアントやその家族について、他人が容易には知り得ないようなセンシティブな個人情報を詳細に知り得る立場にあります。 個人情報の適正な取扱いが強く求められる分野であることから、監督官庁である厚生労働省の定めるガイドラインを遵守し、故人情報の取扱いに注意しなければなりません。
評価者の資質・経験 人材育成のツールとして、評価制度を活用していくために、評価者は公正に評価を行わなければなりませんし、部下のモチベーションの向上につながるフィードバックを行わなければなりません。 そのためには、評価者の資質や経験が問われることになります。
アセスメントシートは、利用者であるクライアントの状況を把握し、適切なケアプランを立てるために重要なツールです。 医療や介護現場での病状評価や認知状態評価、ビジネスや教育現場での人物評価や能力評価など、各現場でさまざまな形で活用されています。 ただし、個人情報の取り扱いには十分な注意が必要であり、評価者の資質や経験にも注意することが大切です。
アセスメントシートの意義をしっかり認識したうえで、正しく作成することで、さまざまな分野における高い成果の獲得をめざしましょう。
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