2022.12.10
愛着障害とは、父親や母親といった養育者と子どもの間に愛着という感情が育まれず、その結果、対人関係などで問題を引き起してしまう症状のことです。 その原因としては、虐待を受けたり、両親と離別したりしたことがあげられます。
乳幼児期に養育者との間にきちんとした愛着がないと、他人のことを極端に怖がったり、逆に知らない人にもなれなれしくしたりするようになります。 その結果、発達障害や精神疾患を招いてしまうこともあるようです。 子どもだけでなく、大人になってからも愛着障害が治らない人もいます。
愛着障害は、具体的にどういった症状が現れるのでしょうか。 また、どのように対処していけばいいのでしょう。
目次
親子関係の心理的な結びつきがうまくいかないままに育って、その結果、対人関係などのトラブルを生じてしまうのが愛着障害です。
「愛着」とは英語の「アタッチメント」のことで、「養育者など特定の人との情緒的な絆」と訳されます。 例えば、赤ちゃんは泣くことで、空腹感や不安な気持ちを表現します。 そうすれば、両親などの養育者は、赤ちゃんの不安の原因を取り除こうと、食事を与えたりするでしょう。
親子の声掛けや触れあいによるコミュニケーションを通して、子どもは、3カ月を過ぎる頃には、自分の養育者が誰なのかを理解するようになります。 こうして愛情形成がされ、子どもは、人への信頼を感じるようになったり、安心したりするのです。
ところが、生後6カ月~1歳半までの時期に養育者と別離するなどの事態が発生した場合、愛着の形成に問題が起こりやすくなります。
チェックリストを作成して家族の愛着障害をチェックをしてみましょう。
・髪の毛を抜く、爪を噛む(自傷行為) ・他人に危害を加える(他害行為) ・大人を試すような行動をとる ・眠れない ・食事を十分に食べない ・理由がないのに嘘をつく ・体調不良になりやすい
愛着障害には以下の2つがあります。
1.反応性アタッチメント障害の特徴 他人に対して、極度に警戒心を持つのが反応性アタッチメント障害の特徴です。 たとえ、両親などの養育者であったとしても、子どもは距離を置いた接し方を取ろうとします。 あるいは、まわりの人を気にすることなく、もくもくと一人で遊びます。 具体的には、以下のような傾向があります。
・喜びや悲しみを表現しない ・自己評価が低い ・他の子どもと交流をしない ・人の言葉に傷つきやすい ・人との交わりを回避する ・ふとした出来事で落ち込んでしまう
2.脱抑制型愛着障害の特徴 知らない人や、めったに会うことがない人に対して執拗に接触しようとする傾向が「脱抑制性型対人交流障害」にはあります。 また、逆にまわりの気を引くために大袈裟な行動をとりがちで、他人の団体行動が苦手など、コミュニケーションがうまく取れないケースが見られます。
例えば以下のような傾向があります。
・知らない人についていこうとする ・相手かまわずしがみつこうとする ・落ち着きがない ・極端にわがままな言動をとる ・謝ることができない ・すぐに嘘をつく ・衝動的に暴力をふるう
3.大人の愛着障害の特徴 愛着障害は子どもの時だけに発症するものではありません。 愛着障害のまま大人になってしまっていることも珍しくはありません。 自分が愛着障害であることを知らずに大人になってしまい、人との関わり方や感情のコントロールがうまくいかずに苦労している人も多いようです。
特徴としては以下の3つがあります。
1.傷つきやすい、失敗や恐怖を引きずりやすい 他人のちょっとした言葉を耳にすると、過敏に反応する場合があります。 また、自尊心や自己肯定感が低く、自分が信じられないために、失敗すると必要以上に落ち込むことも考えられます。
2.怒ると物事の整理がつかない 怒りをうまく制御することができません。
3.愛情の注ぎ方がわからず関係づくりに苦労する 程よい距離感がわからずに、極端に人の顔色をうかがってみたり、養育者のことを恨んでみたりすることもあります。 また、パートナーと恋愛関係を築くことに困難を感じたり、親の期待に応えられないときに必要以上に自分を責めたりします。
子どもの愛着障害の治し方としては、まわりの人達が親子を支援してあげることです。 しかし、ほとんどの子どもが、養育者を心のよりどころとは思わないようです。 親族や主治医など、まわりの人々が、親子を支援して、子どもに養育者が安全基地であり、依存すべきであることを教えてあげましょう。
養育者や両親への支援が求められるケースもあります。 子どもだけではなく、父親や母親といった養育者も問題を抱えている場合があります。 そのため、子どもの養育者や家族も含めて支援を行う必要があるでしょう。
子どもと養育者を引き離して、養育者から虐待を受けないようにしたり、養育者にカウンセリングや心理療法的・家族療法的を受けるようにすすめたりすることも有効です。
養育者自身が現実に直面する問題を解決するために、生活保護や、育児・家事サービスを利用するという方法もあります。
愛着障害を持つ大人には、安心できる居場所をつくってあげることが必要です。 ありのままの自分でいられる場所、なんでも話せる人がいるといった心のよりどころがあるからこそ、安心して人と接したり、信頼感を覚えることができたりします。 友人や職場、パートナーとの関係を、養育者との関係よりも大切にする必要があります。 幼いころに不足していた養育者とのスキンシップやコミュニケーションを、大人になってから回復してあげることがもっとも大切です。
子どものころのように親と密にスキンシップをとり合うことは、大人になってからは難しいでしょう。 友人や職場、教師、パートナーといい関係を築くことがいい治療薬となります。
子どもの障害とされている愛着障害ですが、大人になっても愛着障害を持つ人もいます。 そのままにしておくと、うつ病などの二次障害を発症することもあります。
愛着障害は薬による治療は行わないので、すぐに治すことはできません。 時々は、まわりの助けを借りて、じっくりと治療する必要があります。
愛着障害を克服するためにどうしたらいいのかわからない場合は、専門家に相談してみるのも一つの解決方法でしょう。
自治体の子育て支援課、あるいは心理カウンセラー、精神科などがあります。 二次障害を防ぐためにもぜひこういったところに相談してみましょう。
また、就労移行支援という福祉サービスもあります。 障害者が一般企業に就職するためのさまざまなサポートを行っています。 働くことが悩ましかったり、体調が不安定で働けるかわからなかったり、一人では就職活動がうまくいかないといった悩みを持つ方は、ぜひ利用してみてはいかがでしょうか。