2022.10.05
学校や職場といたある特定の場所にいると、話すことができなくなってしまう症状のことを緘黙症(読み方は「かんもくしょう」)と言います。
幼少期に緘黙症になることが多く、単なる性格だと思われ、治療を受けることもなく、大人になっても治らない場合があります。
そのような人は、職場や学校で苦しい思いをされていることでしょう。
緘黙症の診断や識別方法、緘黙症の人との接し方などについてこの記事では見ていくこととします。
目次
全く話せない全緘黙と、特定の場所や特定の状況になると話すことができなくなる選択制緘黙症との2つが緘黙症にはあります。 両者を比べてみると、選択性緘黙の方が多く見られるようです。
緘黙症の人は、単なる人見知りだと誤解されやすい一面があります。 しかし、緘黙症の特徴として、例えそこが落ち着ける場所や場面であっても、特定の場所や場面になると話すことができないという状態が何カ月も、何年も長続きします。
どちらかというとおとなしい性格の子供が選択性緘黙症には多いようです。
クラスメイトに話を聞かれたり、注目を浴びたり、恐怖に感じたりする姿を見て、親や先生は、その子の性格だと思い、緘黙症を放置してしまいます。 緘黙は、稚園などに行き始める5~6歳の頃から、まわりの人に気づかれることが多く、遅い人の場合は、小学生や中学生になってから症状が現れることも。 適切な治療や支援を受けることのないままに、大人になってからも治らない場合があり、社会生活に大きな支障があり、とても辛い日々を送ることになるでしょう。
緘黙症は早いうちに適切な治療と支援を受けることが大切です。
緘黙症は、子供の場合と大人に場合、その症状に違いがあります。 人によっても症状に故人差がありますが、「緊張しやすい」「不安になりやすい」という点は共通です。 子供の場合は、以下の症状があります。 ・授業中に発言できない ・挨拶が苦手でできない ・発表会などで声が出せない ・家族など特定の人としか話せない ・誰とも話すことができない
・トイレに行けない ・動作や話し方が遅く過保護に育ったと思われる ・授業中に意見を求められても発言できない ・体育が苦手で評価されない ・わからないことがあっても質問できない ・発表会や卒業式で声を出せない ・出席をとる時に声をだしたり手を上げたりすることができない
・配られるプリントが足りなくても声をかけることができない
特に小学校や中学校などの学校生活で大きな支障が出てしまいます。 周りの人のみならず教師でさえ緘黙症に対する理解が少ないので、適した配慮や支援が与えられません。
大人の場合は、以下の症状です。 ・意味がわからないことがあっても質問できない
・喉がつまって声が出せなくなる
・挨拶や雑談ができない
・ある一定の場面や状況では話すことができないが、それ以外では話すことができる
・相手の指示にすぐ反応できない
・困っていることがあっても伝えられない
・視線が気になってストレスになる
・プレゼンすることがつらい
大人になれば症状を隠しながら働くことが多いので、ますます会社に居づらくなってしまい、二次的な問題を招いてしまうことがあります。
米国における精神医学会の診断基準DSM-5による場面緘黙の診断基準は以下のとおりです。
・家にいる時は話せるのに、職場や学校など話す時間が多い場所では、話すことができなくなる
・症状が、仕事や学校の成績、他人とのコミュニケーションを妨げている
・症状が、最短でも1カ月以上続く
・話が難しいからとか、話したくないからといったことが話せない理由ではない
・症状は、吃音症などのコミュニケーション症や、自閉スペクトラム症、統合失調症などの精神病性障害の経過中のみに発症するものではない
診断の一番のポイントは、ある特定の場面や状況以外では話せるのに、特定の場面や状況となると話すことができない点です。
なお、人見知りや恥ずかしがり屋などの気質によるものや、あたりに対する反抗、わざと話さないといった場合は診断の対象外です。
うつ病のような障害を合併している可能性も、人によってはあるため、自己診断は禁物でしょう。
緘黙のため、日常生活に生きづらさを感じているならば、直ちに心療内科や精神科といった専門医のいる病院で受診することです。
場面緘黙症の人への接し方はどうすればいいのでしょうか。
1つ目は、どういう配慮をして欲しいのか、して欲しくないのはどういったことか、場面緘黙症の子供から話をよく聞くことです。
2つ目は、学校などで困っていることはないかなどを、家で本人から丁寧に聴き取ることです。 ある先生が苦手だとか、図書館なら平気だが、トイレに行くのが怖いなどといったことがわかれば、先生に相談してできる限り個別に対応してもらうようにしましょう。
3つ目は、いやがることを無理にさせないことです。 緘黙症であるということは、子供がすでに強いストレスにさらされているということに他なりません。
4つ目は、本人をじっくり観察することです。 家では普通に話すのに学校では全然話してないなど場面緘黙に当てはまることがないか、周りの人といっしょにじっくり考えてみましょう。
例えば、朝は学校に行くのをいやがって大泣きするけれど、後でけろっとしていることは、普通の子でもよくあります。 しかし、毎朝異常に抵抗するなどの状況がある場合は、恐怖や不安感が私たちの理解を越えたレベルである可能性があります。
分離不安症などの症状をあわせもった子供もいるかもしれませんね。
5つ目は、一人で抱え込もうとせず、自治体の保健師や子育て相談・発達相談の窓口などの専門家に相談してみることです。 周りの力を頼ることも大切でしょう。
6つ目は、安心してその子が過ごせる環境を整備してあげることです。
環境を整えることで場面緘黙を改善することができます。 幼稚園の段階で治ったり、小学校になる段階で話せるようになったりする子もいます。 その意味でも、その子が不安や恐怖を感じないで済むような環境を作って、安心して話せるようにしてあげることも大切でしょう。
7つ目は、何かをさせたいことよりできること・したいことをさせるようにすることです。
ついつい、話せないとわかっていても挨拶や返事を促してしまうこがあります。 例えば、誰かに会った時に「ご挨拶は?」と言ったり、お小遣いをもらった時に「ありがとうは?」などと言ったりすることです。
しっかり計画を立てて、これならこの子でもできる、やりたがっていると思われることから、少しずつ話す練習に取り入れていくことが大切ですしょう。
場面緘黙は、強引に治そうとすると、逆効果になってしまいますので、少しずつできることから治療を進めていくのが結局は近道となります。 その際、自治体の保健師や子育て相談・発達相談の窓口などの専門家の力に頼ることも大切です。 治療に時間がかかってしますので経済的にも大変でしょう。
そこで、発達障害支援法というものがあり、場面緘黙と診断されたら、この法律に定められた支援を受けることができます。
あるいは、場面緘黙などで働くことに困難を感じている人への支援として「就労移行支援」もあります。
場面緘黙症を解決するための糸口をつかむには、周りの力を頼ることが不可欠です。