2021.11.08
傷病手当金とは業務外の病気やケガのため仕事を休んでも手当を受けられる公的制度です。 傷病中の労働者のみならず、その家族の生活をも支えるための大切な給付金となります。とは言え、これらの給付金制度は支給金額の計算方法や支給条件は大変複雑です。傷病手当金の制度を正しく理解できている人は少ないのではないでしょうか。 傷病手当金について、条件や申請方法、いつまでもらえるのかなどを中心に詳しく見ていきましょう。
目次
社会保険制度とは、業務以外の病気やケガのためがなくなったり、働けなくなったりしたときでも生活に困らないようにと給付金が支給される制度です。社会保険制度の中にはいくつかの保険制度があり、健康保険や厚生年金保険などがあります。保険料を払っていれば、万一の場合に必要な保障を受けられるという仕組みです。
健康保険は、病気やケガに関する給付、死亡に関する給付、出産に関する給付の3つがあります。このうちの病気やケガに関する給付として支給されるものが傷病手当金です。病気やケガで仕事を休まざるを得なくなり、収入が得られなくなった場合に保障を受けることができる制度です。
病気やケガになっただけで自動的に傷病手当金が支給されるということはありません。傷病手当金を受給するための全ての条件を満たしてしている必要があります。支給要件は次のとおりです。支給条件が満たされていないと思い込んで傷病手当金をもらわなかったとしたら、大変もったいない話ですね。
健康保険の傷病手当金の対象となるのは仕事に関係しない病気やケガです。 業務災害や通勤災害による場合は、労災保険の対象となり傷病手当金の対象ではありません。
例えば、訪問営業をしている人が、脚をケガしたりして仕事ができない場合などが該当します。 たとえ病気やケガが同じでも、職種によって仕事ができるかどうかの判断は変わってきます。 同じ脚のケガでも、デスクワークであれば、端末の入力などが中心なので仕事は可能とみなされて傷病手当金の対象外とされることがあります。
1、2日休んだだけでは傷病手当金の対象にはなりません。連続した3日間の待期の後、続けて4日目から休んだ場合、4日目からが傷病手当の支給対象となります。
例をあげると、2日続けて休んで、3日目に勤務した場合、3日連続の休みとはならないため、待期期間は認められません。一方、3日連続して休んで、4日目も引き続き休んだ場合は、待期期間は成立です。さらに、待期期間が成立した後に仕事をしてその後再び休んだ場合は、再び休んだ日が傷病手当の起算日となり、手当が支払われることになります。
なお、有給休暇も公休日も待期期間に含めることは可能です。待期期間は同じ疾病に対しては1回限りでよいのです。3日間の待期期間の後、仕事をしてその後再び同じ病気やケガが原因で休んだような場合は別に待期期間を成立させる必要はありません。
仕事を休んでいる間、会社から給料が出ていないことが傷病手当金の支給の条件となります。 例外的に傷病手当金の金額よりも会社の給料の方が少ない場合は差額分の支給があります。
傷病手当金の申請は、基本的に毎月の給料の締日ごとです。これは、本人の雇用主が、賃金計算期間を証明する必要があるのが理由になります。将来については医師が働くことができないことを証明していても傷病手当金の申請は不可能です。あくまでもこれまでの実施に対しての清算というかたちになります。
たとえば、20日から翌月10日まで勤務できなかった場合は、翌月1日以降に20日から末日までの分を申請し、翌月1日から10日までの分は翌々月1日以降に申請します。申請後疾病手当金が振り込まれるまでは最短で10日ほどかかります。しかし、審査が長引けばこの限りではありません。
傷病手当金はいつもらえるのでしょうか。疾病手当の支給日は平日の10日と20日と月末で、毎日振込みがあるわけではありません。支給日が休日の場合はその前の金曜日が振込み日です。振り込み前に支給決定通知書が届き、金額と振込日が記載されています。
通知書が届かない場合は個別に問い合わせが可能です。協会けんぽのホームページで傷病手当金の支払いの確認をすることができます。
支給期間はいつまでもらえるのでしょうか。待期期間後の支給開始日から最も長くて1年6カ月です。1年6カ月を超えると、例えまだ仕事ができない状況でも、退職後でも手当は支給されません。 さらに、休職後復職してその後また同じ病気やケガが原因で休職となった場合でも、途中の復職期間も含めて支給期間は1年6カ月になります。再度休み始めた日から1年6カ月がスタートするのではないのです。
まずは勤務先へ疾病手当金の申請をしたいことを伝える必要があります。なぜなら申請の際に事業主による証明書が必要だからです。また、傷病手当金の申請にあたって待期期間をいつにするのか、有給をどの日に使うのかなどについて会社側と相談します。
傷病手当金の支給の申請は、「傷病手当金支給申請書」を作成して提出しなければなりません。 その他、事業主や医師に作成を依頼しなければいけない書類もあります。依頼から作成まで1週間以上かかることもあるので、早めに依頼しましょう。傷病手当金支給申請書は教会けんぽのホームページからもダウンロードができます。書類の記入方法や必要書類がわからない場合は、社会保険労務士に相談しましょう。
必要書類を記入したら、会社を経由して健康保険組合又は健康保険組合に提出します。その後、支給決定通知書又は不支給決定通知書が届き支給・不支給が通知されます。手当金が指定口座に振り込まれるまでにはおおむね2~3週間かかるようです。書類を郵送しただけでただちに病手当金が支給されるわけではありませんのでなるべく早く提出するようにしましょう。
傷病手当金の支給申請には、事業主による給与の支払状況の証明書の添付も必要です。 療養期間が経過した後に事業主に証明してもらって書類を作成・提出する流れになります。 療養が長期間になる場合、療養後に一括して申請すると支給される日がかなり遅くなります。 そこで、給与の締切日ごとに毎月申請する方法がおすすめです。
傷病手当金は、病気やケガで働くことができなくなっても、生活費を保障してくれるありがたい給付金です。いざと言う時のために制度内容や申請手続きについて正確に把握しておく必要があります。病気やケガで休み始めたばかりの期間は有給休暇を使用することも可能です。
しかし有給休暇の日数は限られており、休暇が長引く場合は、傷病手当金を頼らざるを得なくなります。疾病手当金の申請はじっくり取り組めば手続き自体はそんなに難しいものではありません。とは言え、家計の都合で早く給付を受けたいという場合もあるでしょう。該当する人はためらわずに担当医師や会社の担当者とも相談して早々に書類を作成しましょう。