2024.06.14
こんにちは。栃木県・群馬県の障害者グループホーム「ファミリー」編集部です。
若年性アルツハイマーは、65歳未満で発症する認知症の包括的な呼称です。40代から64歳までの発症を「初老期認知症」、18歳から39歳までの発症を「若年期認知症」と区別することもあります。患者数は約4万人と比較的少ないですが、働き盛りの世代に発症するため、個人のみならず家族や社会への影響も甚大です。
高齢者で認知症の人は女性が多いのですが、「若年性アルツハイマー」の方は男性の方が多いのです。2009年の厚労省による調査によると、日本の「若年性アルツハイマー」の男女比は6対4となっています。「若年性アルツハイマー」になった時に本人や家族がとるべき行動などについて述べていきます。
目次
若年性アルツハイマーの症状は、大きく「中核症状」と「BPSD(行動・心理症状)」に分けられます。
脳の異常な変化や、脳の病気や細胞がこわされることによる「中核症状」と、「中核症状」の二次的なものとして発症する「BPSD(行動・心理症状)」に「若年性アルツハイマー」は二分されます。「BPSD」は、ストレスやまわりの状況によって発症しやすくなるとされており、必ず発症するというものではありません。なお、「BPSD」とは「Behavioral and Psychological Symptoms of dementia」の略です。
【中核症状(認知機能障害)】
【BPSD(行動・心理症状)】
若年性アルツハイマーの平均寿命は発症から約8年と言われています。しかし、あくまで平均であり、個人差が大きいことに注意が必要です。進行が速いという特徴があり、40代発症の場合は高齢者の2倍以上のスピードで進行する可能性があります。
現時点では完治する薬はなく、対症療法が主流です。中核症状にはアリセプト、BPSDには抗精神病薬などが使用されます。
若年性アルツハイマーは、進行が速いため早期発見・早期治療が重要です。記憶障害や見当識障害などの症状に心当たりがある場合は、早めに専門医もしくはかかりつけ医に相談しましょう。20代や30代で発症した場合、うつ病や更年期障害と誤診されるケースもあるため、注意が必要です。
「若年性アルツハイマー」の人は、会社などで最も活躍している世代の人が年齢からして多く、発症した場合の生活への影響は甚大です。
若年性アルツハイマーと診断された場合は、以下のような対応が考えられます。
【職場に相談する】 労働時間の短縮や配置転換を申し出ます。しかし、そのため働いていた職場での就労を継続することがむずかしくなった場合は、改めて障害者枠で再雇用してもらう方法もあります。ハローワークで就労訓練を受けることも可能です。自分でできる範囲の仕事で家計を支えるために働き続けるという割り切った考え方を持つことも必要でしょう。
【生活習慣を改める】 「血管性認知症」は、脳梗塞や脳出血を原因とする認知症で、「若年性アルツハイマー」につながるものです。血管をいためるような食事を控えることは認知症の予防になることでしょう。例えば、栄養バランスの取れた食事や質の高い睡眠など、生活習慣をただすことで認知症の進行を遅くすることができます。また、アルコール性認知症は、過度な飲酒を避けることが発症しないためには必須ですね。
【公的制度を利用する】 さまざまな社会保障制度や公的制度やサービスがあります。それらを効果的に組み合わせて利用することで、医療費の負担を軽くし、余裕を持った生活ができます。
・障害年金(社会保障制度) ・障害者手帳(社会保障制度) ・自立支援医療(社会保障制度) ・医療費・介護費の自己負担の減免(社会保障制度) ・住宅ローン返済相談(社会保障制度) ・運転免許の返納(義務) ・日常生活自立支援(社会保障制度) ・成年後見(社会保障制度) ・介護保険(介護サービス) ・障害者福祉(介護サービス)
「若年性アルツハイマー」の人はまだ体が動くだけに、仕事などで今までできていたことができなくなるので、とてもはがゆい気持ちになります。そういったストレスがさらに認知症を悪化させ、うつ・興奮・妄想・BPSDなどを増長してしまうことも少なくありません。まわりの人には、本人のできる部分を生かせてあげられるようなライフスタイルを持続させ、本人が自信をなくすような言動や行動をしない配慮が必要です。
認知症であることを本人に知らせるべきかは、家族のなかでも議論になることが多い問題でしょう。本人に知らせると決めたら、家族も一体と向かいあっていく覚悟が必要です。バリバリに仕事ができている段階で告知を受けると、精神的なショックが大きく、うつが急速に進むおそれがあります。とはいえ、本人がまだ正常な判断ができる段階で告知をおこなっておけば、本人の意思や希望をチェックしながら治療を行うことができるのです。
若年性アルツハイマーの患者さんを支えるためには、以下の点に留意することが大切です。
「若年アルツハイマー」に対して、現在国が進めている「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」では、「若年性アルツハイマー」の人へのサポートが補強されつつあります。「若年性認知症コールセンター」が全県に設けられており、そのほかにも地域包括支援センターや認知症疾患医療センターなどの相談窓口があります。生活や介護のことで悩んだら、まずは相談してみましょう。また、全国各地の認知症カフェや家族の集いなどに参加して、同じような悩みを持つ人と交流をもつのもいいのではないでしょうか。
若年性アルツハイマーは、完治は難しい病気ですが、早期発見・早期治療と適切なサポートにより、進行を遅らせ、質の高い生活を送ることが可能です。もし、自分や身近な人が若年性アルツハイマーかもしれないと感じたら、早めに医療機関を受診し、必要なサポートを受けましょう。
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