2021.04.30
訪問看護とは、精神に障害を持つ人に対するものではないと考えている人がいると思います。訪問看護は体の健康状態のチェックだけで、私は体の病気じゃなくて精神障害者だから必要はないだろうとか、家に訪問してもらってもやってもらうことがないのではないかと考えてしましまうものです。しかし、現実に夜眠れないこともあるし、生活リズムが乱れることもあります。一人では出かけることもできないし、まわりの人とうまく話したり付き合ったりすることができない。薬を服用するのを忘れることもあるし、病気や症状に対する不安もある。とにかく話し相手が欲しい。
必要な支援とか社会資源を活用することによって、精神障害を持ちながらも自宅にいながら健康的で快適な生活ができることへのサポートが受けられる手段や仕組みはないものでしょうか。
目次
精神科訪問看護とは、普段生活する精神に障害のある人が、地域社会とも溶け込み、家族とともに安心して毎日の生活を行い、医師の指示に従いつつスタッフが定期的に訪問して、看護や社会復帰への立ち上げの支援を行います。
一つ一つの支援内容を見てみましょう。治療方法の質問や相談、病状の安定化、日常生活のサポート、対人関係の相談や気分転換などのリフレッシュの手伝いをおこなうのです。さらに、定期的な健康状態チェックなどの健康管理や服薬管理、くわえて家族の不安感や悩みの相談や社会資源の活用方法の指導なども行ってもらえます。訪問回数は、月曜から金曜のうち週3日までが限度で、土日や祝日は除きます。訪問の頻度は主治医と相談しながら、患者の病状や希望もかんがみて計画をたてて実施します。
訪問者は、作業医療士、精神健康保険福祉士、看護師、准看護師のうちの2名となるのです。作業療法士とは国家資格で、病気や障害によって生活のしにくさを抱える障害者に対し、料理や掃除や洗濯といった生活活動の実地演習をおこない、また、趣味やスポーツを通して余暇時間の過ごし方の指導等のサポートをおこなう人になります。精神健康保険福祉士とは国家資格で、精神障害者を対象に社会復帰のための助言や相談・訓練・指導をおこなう人です。訪問者には厚労省によって報酬等の基準が定められています。
訪問時間は1回につき30分から1時間程度です。診療報酬には、各種健康保険が適用され、自立支援医療制度の利用が可能です。生活保護受給者は費用がかかりません。交通費は病院からの移動距離が算定要件であり、その負担が必要です。
精神科訪問看護の役割の1番目は、障害者の生活・自立支援になります。精神疾患のある人でも手助けなく日常生活を送れるように自立させることは、訪問看護の重要な役割です。退院してからも通院しなくなってしまう人もいます。精神疾患があるので外出することの恐怖感から通院できなくなるという人もいるでしょう。そうすると振出しに戻って、再び入院しなければならなくなるという事態も発生します。訪問看護が目標とする自立の要件とされているのが服薬管理と、日常生活が送れるようになることです。自宅にいながらも治療が十分にできるようにし、病気の再発や再入院を避けることが大切でしょう。
精神疾患があると、社会復帰を望んでもかなわない場合があります。関係機関や研修などの制度を活用して社会復帰ができるようサポートするのも、精神科訪問看護の重要な仕事です。また、多くの精神疾患を持つ患者は不眠症となっています。しかし、不眠状態が長く続くと精神疾患が悪化するため、生活リズムが狂ってしまうものです。不眠症で悩んでいるときは看護師がそのサポートをおこなうようにします。
役割の2番目は、病気の悪化予防・服薬管理です。指定された薬を定められた時間に飲めるようにしたり、副作用が起きないかどうかをチェックしたりする服薬に関するケアも仕事の一つになります。薬は精神疾患を抑えるために必要不可欠です。本人はさほど必要性を感じていなくても、薬を飲むことは生きていくうえでは欠かせないものであるということを伝え、飲み忘れがないように意識してもらう必要があります。
3番目の役割はコミュニケーションです。精神科訪問看護においては、ほとんど医療処置をすることはありません。それよりも、コミュニケーションをとることの方が大切になります。コミュニケーションをとりつつ、症状の観察と早期発見・身体合併症への配慮等を行い、身体に異常が発生していないかの点検をおこなうのです。孤独感は精神に負担をかける恐れがあるため、まずは孤独を感じないように密にコミュニケーションをとるようにします。思想、信条や障害状況に関わらず、すべての患者の信頼おける友人となり、自宅での生活の不安を少しでも解消できるように患者に寄り添うのです。
4番目の役割は家族の方への支援です。障害者への関わり方に悩んでいる家族の方もいることでしょう。家族の相談への助言や支援、家族を支える社会資源の活用方法についてサポートをします。
では、精神科訪問看護にマッチする人はどのような人なのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
まずは、他人との交流を避けて一人閉じこもりがちになっている人。身の回りの整理などが うまくできない人。きまった時間に定期的に処方されや薬がきちんと飲めない人。精神障害により毎日の生活に支障を感じている人。寂しさや不安にいつも悩まされて生活に支障をきたしている人。病気や症状を自分で治したいと考えている人。生活リズムを整えたいと思っている人。外来通院が遠のきがちな人。家族にも自分の病気のことをもっと理解して欲しいと思っている人。まわりの人との関わりがうまくできない人。
こういったことが当てはまる人は精神科訪問看護の利用を考えてみてはいかがでしょうか。
かかりつけの病院に通院中の患者は、主治医に相談します。地域医療連携室や最寄りに開設された訪問看護ステーションに相談する方法もありますね。必要書類としては、主治医が記入する指示書と、本人または家族が署名捺印する訪問看護申込書です。
手順としては、まずは、主治医か外来看護師に申し出て、志望動機を説明します。それから主治医と相談して訪問内容や訪問の頻度を決めるのです。この時主治医はgafの評価などを用いて指示書の作成をします。訪問看護スタッフと患者が話し合って訪問日程の調整をするのです。初回訪問日が決まったら、訪問看護申込書および訪問看護用過程状況所の記入をし、申し込みを行います。以降の訪問日程は訪問の都度計画をたてて設定することになるのです。
なお、訪問日は土日祝日を除く、月曜から金曜までで、週三日までとなっています。訪問のペースは病状や患者の希望を聞いたうえで主治医との相談です。初回訪問時に契約を締結します。この時、印鑑や各種保険証の用意が必要ですね。
自宅で暮らしながら医療処置を必要としている人に対して、自宅を訪問し医療的な処置や経過の管理を行なってもらえることは、通常の生活に近いかたちで診療を受けられることです。これは地域の生活者として生きている人にとっては大きな利点となります。精神科訪問看護は精神障害者の生活にとっては、生活の支えとなるサービスということができるでしょう。病気と共存しながらも生活の質を向上することや、家族にとっても最も負担がかからない方法を見つけだすことができるのは大変ありがたいことです。
少しでも精神訪問看護に興味を持った人は、ぜひ、自分の主治医や近くの訪問看護ステーションなどに一度相談してみてはいかがでしょうか。人間らしい生活を取り戻すことで、毎日を笑顔で過ごすことができたら最高ですね。