2021.05.08
嗅覚過敏は、普通の人にとってはなんでもないアルコールや洗剤などといった日常的なものの匂いが耐えられないといった症状があります。嗅覚過敏の人は、プライベートな生活だけでなく職場においてもいろんな苦労がたえません。そのため仕事のパフォーマンスに影響が出たりすることもあるのではないでしょうか。嗅覚過敏と言われる人はことさらadhdなどの発達障害や自閉症の人に多く見られるようです。嗅覚過敏は何が原因で生まれてくるのか、どのような症状があるのか、自分で対処する方法や受診すべき医療機関はあるのかなどについて詳しく見ていくこととしましょう。
目次
感覚過敏とは、嗅覚や聴覚、視覚、触覚、味覚といった五つの感覚のうちいずれか、またはいくつかの組み合わせが異常に敏感に感じられることによって、イライラしたりとか嫌悪感が発生したりする状態のことです。その中でも特に匂いに敏感な人のことを嗅覚過敏と呼ぶのです。嗅覚過敏の人は、タバコや洗剤や化粧品やオーデコロンといった特定の匂いを少かいだだけで吐き気や頭痛がしたり、料理につけるコショウなどの匂いで鼻が痛くなったり、人ごみによる熱気で気持ち悪い状態になって急に嘔吐したりすることがあります。
感覚過敏の人は公共交通機関などに乗車できず、生活も不便を感じることでしょう。そのほかにも気温差に弱かったり乗り物に酔いやすかったり、気圧の変化に対応できず気分が悪くなったりと人によって症状や度合いもまちまちです。緊張やストレスがあるときやうつの状態のときに特に症状が強くなる傾向があります。
生来鼻などに異常があって嗅覚過敏な人もいますが、大人になって不安やストレスが積み重なった結果、いつしか感覚が敏感になっていたという人もいます。また、最近では、まだ正式な病名ではないのですが、「HSP・HSC」という言葉も使われるようになってきました。これは、生まれつき感覚が敏感な人という意味です。敏感ということは繊細な一面があるということで、それがだんだんこうじてストレスになる人のことをいうのです。このような嗅覚過敏な人はプライベートな生活だけではなく、仕事の場面においてもいろいろと面倒なことに直面することが多いのではないでしょうか。
花粉症や化学物質過敏症といったように単に嗅覚が普通の人よりも少し敏感なだけの人もいます。嗅覚過敏とされるか否かは、嗅覚の度合いの強さによって変わってきます。自分はどうなのだろうと不安に思っている人は、一度専門医に診てもらいましょう。自分では判断するのは難しいのです。
嗅覚過敏の原因となるのは以下の3つが考えられます。
生まれながら耳や目などに障害があって、それが理由で嗅覚過敏などの感覚過敏となることがあります。また、脳の神経系のトラブル、たとえばてんかんや脳卒中といった脳の神経系の異常や障害などが原因となっていることもあるのです。
生まれつき脳の機能に偏りがあるため発達障害となり、そのためどこかの器官が感覚過敏となっていることもあります。発達障害の一種の自閉症スペクトラム障害(英語でASD)とされる人の中にはとりわけ嗅覚過敏の人が多いのです。なお、『DSM-5』とはASDの診断基準を示す指標のことですが、その一つに「五感の刺激敏感なこと、あるいは鈍感なこと」という項目があります。
「ストレスや不安な気持ち」が原因となってホルモンのバランスが乱れてその結果、異常に嗅覚が作用することがあるのです。若い頃はなんともなかったのに、成人して働くようになってから生じたストレスによって、感覚がとても過敏になってしまったという人をよく聞きます。
感覚過敏を思い当たる人は、嗅覚過敏なら耳鼻科、視覚過敏なら眼科といったように該当する感覚器専門の病院に、ある種の病気や異常がないかを診断してもらうようにしましょう。診断の結果、嗅覚過敏であるとされた場合は医者の指示する治療方法に従うようにしましょう。ストレスや発達障害によって嗅覚過敏をひきおこしている場合は、精神科や心療内科で治療方がわかることも少なくありません。従って、専門医の診察を受けても改善されないという場合は、精神科や心療内科で再度診察を受けてみるのがおすすめです。
嗅覚過敏なので医者に診てもらったところ、実は発達障害であったことがわかったという、いわゆる「大人の発達障害」の人が近年増えてきています。大人の自分は発達障害であるはずはない、あるいは、男性の更年期障害ではないかなどと思い込んでいる人が多いかもしれませんが、嗅覚過敏の症状が長引く場合はぜひ精神科や心療内科に相談してみましょう。
ストレスや不安が増えて日常生活やビジネスのパフォーマンスに支障をきたしてはいけません。嗅覚過敏の人が自分でできる対処方法や向き合う方法について考えてみましょう。大前提として、耳鼻咽喉科で診断・治療をまずは受けてみましょう。そのうえで、自分でもできる下記の方法を試みてください。
好きな曲を聴いたり、興味のある絵や写真などを見たりして、できるだけ心をおちつかせるようにしましょう。ゆったりと時間をすごすだけでも心が静まります。
・自力でなんとかしようとしても、感覚過敏な人はまとわりつく匂いから逃れることはできません。自力に頼らずに刺激を抑えるためのツールを活用する方法があります。外出する時は活性炭入りのマスクなど、ウイルス感染防止効果の高いマスクがおすすめです。特に昨今ではコロナ禍もあって感覚過敏な人でなくてもマスクは必携ですね。
・いやな匂いをうっかり嗅いでしまったときは、自分の気に入ったアロマ油やステロイド薬などを少しハンカチなどににじませて匂いをかいだり、鼻の中の敏感な部分に付着させたりすることで対処することができます。
匂うものをなくしてしまうことは難しいため、自分で匂いの強そうな場所から離れるなどして、自分を取り巻く環境に配意することも重要です。
・職場の上司や同僚に相談して、自分の性質について理解してもらうようにしましょう。ステッカーを表示することによってまわりの人に禁煙などを意識してもらうのもいいでしょうね。どうしてもまわりの理解が得られなければ職場の産業医に相談してみてください。
・家族に料理の味付けや盛り付け方を工夫して食べやすいようにしてもらいましょう。また、苦手なものは無理して食べないようにします。会社の食堂や学校の給食などでも同様です。
周囲の人に相談しても進展がない場合や、とりわけ発達障害の結果嗅覚過敏となった人の場合は専門の支援機関である就労移行支援事業所などに相談してみるのもいいのではないでしょうか。あなたに合った職場環境づくりをサポートしてくれます。
嗅覚過敏の人にとっては、一般の人が気にならない匂いが耐えられないほどのひどいものに感じてしまうものです。嗅覚過敏が思い当たる人は、まずは精神科や専門の病院で診断してもらいましょう。その結果嗅覚過敏と診断がくだった際は、自分の好きな匂いや嫌いな匂いをきちんと把握したうえで、自分でも工夫をしてできる限りの対策を実施するようにしましょう。とは言っても嗅覚過敏を自力で治すことは至難の業ですね。まわりの人の協力がどうしても不可欠です。家族や職場の人に自分の性質の理解をしてもらったうえで協力をお願いしたり、専門の支援機関に相談したりして、しっかり自分をささえてもうらうこととしましょう。