2021.04.28
マインドワンダリングとは、一言で言うと「心の迷走」です。目の前の課題から注意が逸れて意識がぐるぐる回っている状態になり、課題とは関係ないことを考え始めてしまうことです。本を読んでいる間、ふと昨日のいやな出来事を思い出し、あれこれと考えこんでしまい、気がつけば長い時間ボーッとしていたというような状況ですね。このようなマインドワンダリングをしている時間は、なんと1日の約半分にもなるそうです。マインドワンダリングは、無駄な時間であるとか、ワーキングメモリを低下させるものだとかいう理由で、心理学的にはネガティブなものとされてきました。マインドワンダリング状態から上手に自分の心をコントロールする方法はないのでしょうか。
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車を運転している時など、過去の不快な記憶が頭に浮かび、いろいろと考え込んでしまい、はっと我に返ると、全然違う道を走っていたなどという経験はありませんか。マインドワンダリングとは、「今現在」にやるべきことに注意を向けないで、目の前の課題とは全然関係のないことを考えて、さまよう心のメカニズムのことです。
通常、人間の脳は約半分も現在直面することを考えておらず、済んでしまったことや今後起こりそうなことに意識が向いてしまうと言われています。このような誰もが経験したことのある現象がマインドワンダリングなのです。最近のインターネット環境も心が集中できない要因となっています。スマホにSNSの着信などがあれば、どうしても気になってスマホを見てしましますね。いろんな情報が飛び込んできて、頭はフワフワして情報の整理がつかなくなってしまうのです。
マインドワンダリング、すなわち何かをしながらも別なことが気になる状態の中では、最高のパフォーマンスを発揮できないだけでなく、ストレスもたまってうつ状態になってしまうでしょう。このストレスが生じる原因は、マインドワンダリングによるとりとめもない不安が無意識のうちにぐるぐるうずまいており、しかも不安となる原因がはっきりしないことが原因でしょうね。このように、誰にでも日常起こりうる現象がマインドワンダリングなのです。
現代はマインドワンダリングのネガティブな一面を誘発する環境がそろっています。スマホを常に持ち歩くことによって、視覚、聴覚がスマホにとらわれるようになりました。頻繁にSNSをチェックしては他人の投稿をねたんだり、不愉快な思いにさせられたりしてストレスがたまっていきます。このように世間ではマインドワンダリングの悪影響が指摘されているのです。しかし、マインドワンダリングは必ずしもすべてが悪いことではありません。
例をあげると、職場で仕事の問題で悩んでいる時に、いったん席から離れて廊下を歩いたり売店に行ったりすると、突然意図しないアイデアや対策がひらめいてくることがあります。意識を徘徊するマインドワンダリングによって、独創性が生み出されるのです。これは脳のデフォルトモードネットワークによるもので、問題と対峙している時にいったんその問題から離脱する時間のことを心理学用語で「あたため期:Incubation」といいます。そして、あたため期によって問題が解決される効果のことを「孵化効果Incubation effect」というのです。心の理論としては、ものごとを創造するには意識がさまよう時間、すなわち「孵化期間」が必要であり、そのメリットは神経科学者にも確認されています。
こうして、マインドワンダリングの否定的な評価が見直されてきているのです。マインドワンダリングによる心の余裕からオリジナルな問題解決策、将来のビジョンといったものが生まれてきます。従って、ビジネスの世界などでも仕事のことで悩んだときは、いったんその悩みから離れてマインドワンダリングする時間が必要です。
マインドワンダリングによる意識のさまよいに気づき、そのままそれを受け入れ、自分の意識をコントロールして直面する問題に向けることによって、雑念から脱却する必要があります。そのため、どうしたら自分をコントロールできるのかを思考した結果、誕生したのがマインドフルネスです。マインドフルネスとは一言で言うと、「余計なことをいろいろと考えずに目前のことにだけ集中してしかも反すうできる心の状態」でしょう。
マインドワンダリングは、発達障害やadhdのようなネガティブなものだとされることが多いのですが、マインドフルネスもマインドワンダリングも最近の論文などでその言葉が取り上げられたものです。脳や脳活動に関する本格的な研究も21世紀になって始まったばかりですから、未知なるものという定義でとらえる必要があります。
マインドワンダリングをしずめるためには、「心を目前のことに集中させる」ためのマインドフルネスのトレーニングが必要です。マインドフルネスのトレーニングは、10分間、椅子に座って呼吸に意識を集中するだけ。自分の意識に集中しているといろんな雑念がわいてきます。何も考えないということはいかに難しいことだということがわかりますね。しかし、これではいけないとか、できていないとかいって自分を責める必要はありません。まずは、自分の意識にさまざまな雑念があるのだということを発見するだけでいいのでしょう。
直面する問題に意識をめぐらすと、考えがあちこちに散らばってしまい、よいアイデアなどはでてきません。この状態ではまだ否定的なマインドワンダリング状態ということができます。従って、マインドワンダリングを意識してコントロールする必要があるのです。一定の方向性をもって、はっきりした目標や課題に向けてシミュレーションする必要があります。しかし、マインドワンダリングをコントロールするのは簡単にできることではありません。
思考に行き詰ったときは、いったん思考を中止するのです。思考をリセットし、気分転換する必要があります。否定的なマインドワンダリングに代えて、マインドフルネスを機能させることによって創造性を高めるのです。否定的なマインドワンダリングの雑念を認識し、その雑念を切り離す必要があります。そのためには、「心を今ここに集中させる」マインドフルネスのトレーニングを習慣づけることが大切です。
マインドフルネスは瞑想法の一種。トレーニング方法の手順は、まず、自分の呼吸に意識を向けます。そうすると雑念がわいてきますね。その雑念に気がつきます。その雑念を判断したり評価したりせずに自分から切り離すのです。そして、自分の呼吸だけを意識するのです。このセットを繰り返します。このセットを毎日15分から30分続けて習慣とすることにより否定的なマインドワンダリングによる意識の散漫を防ぐことができるのです。
過ぎ去ったことはもう戻れません。また未来のことはこれから体験することですので今はどうすることもできませんね。毎日30分のマインドフルネスのトレーニングを継続すれば、負のマインドワンダリングが減少するのを実感するようになるでしょう。いろんな感情に左右されそうになった時は、マインドフルネスの実践により感情の氾濫をしずめるのです。そうすると創造性があふれ出てきて、今やるべきことに集中できるようになり、しかもストレスもなく快適な時間をすごすことができます。ぜひ、自分の心を上手にコントロールして有意義な日々を送ることにしようではありませんか。