2022.09.12
青年期から成人早期にかけて発症する精神疾患のことをパーソナリティ障害と言います。
症状はさまざまですが、感情の浮き沈みが激しく、また体調が不安定になることが多いようです。
いろんなタイプに共通して言えることは、対人関係でうまくやっていけないため、仕事も続かないということでしょう。
パーソナリティ障害とは具体的にどのような精神疾患なのでしょうか。 また、対処方法や周りの人の接し方はどうすればいいのでしょうか。 もしかして自分や、家族・恋人がパーソナリティ障害かもしれないと思う方は、ぜひ参考にしてください。
目次
行動や反応が一般の人とは異なり、しかも頑固で協調性がないため、本人や周囲の人にいやな思いを与えてしまう精神疾患のことをパーソナリティ障害と呼んでいます。
青年期から成人早期にかけて発症することが多いようです。
「人格障害」と呼ばれていた時期もありましたが、差別のニュアンスを持つ言葉であるため現在は「パーソナリティ障害」と呼ばれるようになりました。
ここでの「パーソナリティ」とは、「性格」「個性」の意味ではなく、考え方、物事の捉え方といった意味です。
家族・友人・恋人などとの関わり方は、人によってさまざまですが、それらを一括してパーソナリティと呼びます。
単に変わった人であるとか、扱いづらい人であると思われがちで病気とは気付かれにくい点がパーソナリティ障害の特徴です。
また、症状が当てはまっても、本人が自覚しない場合はパーソナリティ障害とは言えません。
1.A群
普通の人とは異なる考え方や行動をする種類のものです。
猜疑性(妄想性)パーソナリティ障害
相手に強い猜疑心を持つのが特徴です。 人を信用することができず、家族や友人が自分をだまそうとしているという妄想をもちます。
シゾイド(統合失調質)パーソナリティ障害
他者への関心がなく、孤独を好み、他人からの評価を気にしないのが特徴です。
感情があまり表に出ないため、冷淡な性格だと思われがちです。 一方、充実した自分の世界を持っているという一面もあります。
統合失調型パーソナリティ障害
考え方や行動が変わっているという印象を持たれるのが特徴で、シゾイドパーソナリティ障害と類似しています。 話が飛んだり、突然思い出し笑いや独り言を言ったりすることもよくあるようです。 人が見ているとつい無理をしてしまい、精神的な負担を覚えることもあります。
2.B群
感情的・衝動的な種類のものです。
反社会性パーソナリティ障害
暴力をふるっても悪いことをしたという自覚がありません。
公共のルールにも関心がないため、人間関係もうまくいきません。
境界性パーソナリティ障害
他人から見捨てられてしまうのではないかという感情を持つため、不審な行動をとり、人間関係を不安定にします。 自己による感情のコントロールがききません。
演技性パーソナリティ障害
恋人や他人から常に脚光を浴びていたいという欲望があります。 そのため、平気で嘘をついたり、相手によって外見を変えたりする傾向もあるようです。
自己愛性パーソナリティ障害
自分は優れた人物だと思い込み、周りから称賛されないと気がすみません。 一方、挫折すると過度に落ち込んでしまうのも特徴です。
3.C群
びくびくしたり強い不安にかられたりする種類のものです。
回避性パーソナリティ障害
他者から批判されることを異常に恐れ、社会参加をあまり望みません。 そのため、人間関係を上手に築けない傾向があります。
例えば、責任のある仕事を命じられても、失敗したくないために断ることが多いようです。
依存性パーソナリティ障害
「幼児型」という他人に依存するタイプと、依存している人に隷属する「献身型」、「服従型」というタイプとがあります。 自分で物事の判断をすることができません。
強迫性パーソナリティ障害
自分で決めた規則に従わない人に対して厳しく接する傾向があります。 そのため、毎日の生活や人間関係がうまくいきません。
4.その他
受動攻撃性パーソナリティ障害
依頼されたことを忘れてしまったり、行動が極端に遅かったりするのが特徴です。 無意識に拒否している気持ちが反映されており、直接手をだしたり、怒りを見せたりすることはありません。
いくつかの対処方法をご紹介します。
精神療法
精神療法にはさらに以下の3つがあります。
・個人精神療法
・集団精神療法
・家族療法
個人精神療法・集団精神療法は、患者の認知や思考、行動パターンの偏りを改善していく療法です。 ともに患者の心理面に働きかける認知行動療法です。
家族療法とは、家族間の問題点を解決する方法で、家族関係がうまくいっていない場合に用いられます。
薬物療法
不安になる、憂うつになる、イライラするといった症状を緩和するために薬物を服用します。 とは言え、薬物は本人の生活や治療に影響がある場合の処置とされるもので、パーソナリティ障害を根本から治療するものではありません。
継続的に治療を行う
そのままにしておくと症状が悪化したり、うつ病などの精神症状が発症したりするおそれがあります。
また、障害の程度もさらにひどくなり、別のタイプのパーソナリティ障害に発展する場合もあるかもしれません。
そのためにも根気よく治療を続けることが大切です。
会社に事情を伝える
通院を考慮してもらったり、勤務形態や適性に合った業務に従事させてもらったり、適切な人を自分の側に配置してもらうためにも会社にパーソナリティ障害であることを伝えましょう。 職場環境を配慮してもらうことも可能です。
パーソナリティ障害を会社に伝えづらい場合は主治医に相談してみるといいでしょう。
健康的な生活を心がける
十分な睡眠と食事をとることによって健康的な生活を心がけることも大切です。
安定した規則正しい生活をおくり、ストレスをためないようにしましょう。
接し方として注意すべき点は、パーソナリティ障害の人を説教する姿勢はご法度ということです。
こうしなければならないという高圧的な姿勢は、依存度を増長させ、本人を行き詰まらせてしまう結果となるでしょう。
接し方としては、「ほめる」姿勢が最も効果的です。
本人がかたよった言動を自覚して「ごめん」といえば、反射的にほめるように心がけましょう。
パーソナリティ障害の患者を指導して変えていくのではなく気付いて変わるよう根気強く接することが大事です。 「あと何年以内に克服しなければならない」などというあせりの気持ちを患者に持たせないようにしましょう。
自覚しにくいのがパーソナリティ障害の特徴です。 人知れず、悩みを抱えたまま生活を続けている人もいることでしょう。
パーソナリティ障害は、治療すれば治癒される精神疾患です。
それぞれの特徴に応じた対処方法もあります。
また、その人に合った仕事をさせることで症状が軽減されることもありますし、会社に公表することで、さまざまな配慮をしてもらうことも可能です。
さらに、大切なのは専門機関で適切なアドバイスを受けることです。 医療機関や就労支援センターといった専門機関のサポートを受けることで、困難から抜け出せるきっかけがつかめるかもしれません。
社会生活・日常生活に生きづらさを感じている人は、ぜひ、第三者的な専門機関に相談してみてはいかがでしょうか。