2022.07.14
日本では、高齢化による老老介護や介護疲れが問題となっています。 介護による暴力や心中、家族の共倒れといった悲しいニュースを耳にすることも多くなってきました。
障害者や高齢者だけではなく、その家族にとっても、健康のありがたさが見直される時代になってきました。
そして、そのためには、「レスパイト」が必要です。 レスパイトとはいったいどのようなものなのでしょうか。
目次
レスパイトケアとは、休む暇のない在宅介護を代行し、家族に一時的な休息の機会を与えて介護疲れの軽減や、一日でも長く在宅介護を続けやすい環境をつくるための福祉サービスとも言うべきものです。 つまり、介護者のためのケアと言うことができます。
レスパイトケアはヨーロッパで誕生しました。 レスパイトケアとは、「レスパイト(respite)」という言葉からきているものです。 「レスパイト」には、「息抜き」「小休止」などの意味があります。 介護をする家族にもリフレッシュが必要だと言う考えです。
在宅介護者は、身体的な疲れのみならず精神的な疲れも日々、溜まっていきます。 その結果、ストレスや身体的疲労がピークに達してしまい、介護者の方が病気になってしまうこともあります。
介護から一時的に距離を置き、自分自身の身体と心をケアする時間を持つことが、在宅介護者が長く在宅介護を続けるためにも必要なのです。
目的やメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
自分の時間を作り、リフレッシュできる 介護をレスパイトケアサービスにひとまずまかせることで、普段の介護生活から解放されます。会社の仕事や旅行などの趣味に時間を使って、リフレッシュすることが可能です。
在宅介護の継続につながる 在宅介護は一日中息が抜けません。 家族による介護も続けていくのは至難の業です。 レスパイトケアをうまく利用すれば長期間在宅介護を続けることができます。
介護のプロによるケアを受けられる レスパイトケアは、プロの介護士によるケアを受けることができるため、今後のケアの仕方についてもおおいに学ぶところ大あるでしょう。
レスパイトケアサービスにはどのような種類のものがあるのでしょうか。
ショートステイ 在宅介護を行っている人をサポートするため、1976年に開始され、日本におけるレスパイトケアの先駆けとなりました。 認知症や要介護認定が1日~30日間、短期入所できるサービスです。
ひところは冠婚葬祭や病気、事故などやむを得ない事情で利用されていましたが、現在では、私的な理由でも利用されるようになってきました。 レスパイトケアの重要性が認められてきたというわけです。
デイサービス 送迎付きで日中事業所で、リハビリ・健康チェック・レクリエーション・入浴などのサービスをプロの介護者から受けることができるデイサービスもレスパイトケアの一つです。
デイサービスを利用すれば、介護者は、仕事や家事、趣味活動などに日中の時間を費やすことができます。
年中無休で利用でき、宿泊や利用時間の延長も可能といった事業所も増えてきました。
訪問介護 利用者の自宅を訪問して生活援助や、身体介護を行うサービスのことです。 食事の介護や入浴、おむつ交換など身体的負担を感じる作業や、調理や洗濯、掃除といった家事までホームヘルパーがサポートしてくれます。 ストレスが緩和され、時間ができることで家族は、肉体的にも精神的にも楽になるでしょう。
レスパイト入院 さらに、レスパイトケアの一形態として、「レスパイト入院」があります。 レスパイト入院の条件として、器官切開・人工呼吸器といった医療的処置を必要とする人が対象者です。 ショートステイが介護保険適用になるもので施設の短期入所するのに対して、レスパイト入院は、医療保険適用になるもので病院に短期入院をします。 なお、レスパイト入院は、生命保険などの入院給付金の対象となる場合もあるようです。
レスパイトケアに関しては課題もあります。
介護者は、旅行やレジャーで休むためにレスパイトケアを利用してもいいものかとか、介護を放棄していいのかと悩んでしまいます。 特に責任感の強い人は、抵抗感が強いようです。 そうして、レスパイトケアを利用せずにこれまでのように介護に追われてしてしまいます。
介護を受けている側も、他人から世話を受けることに不安を感じることもあるでしょうし、認知症があればなおさら反発を覚えるでしょう。
しかし、ものは考えようです。 プロである介護士にもちゃんと休みをとっています。 また、そうしたプロの介護士から正しい介護の方法を学ぶのだと思って施設を利用してみると気持ちも楽になるのではないでしょうか。
また、レスパイトケアの利用予約が取りにくいという問題もあります。 長期間定期的にショートステイを希望する人が多いため、申し込んでも、なかなか予約がとれないのが実情です。 バックアップとしていくつかの事業所と契約をしている人もいるようです。 あるいは、介護保険の限度額の関係で必要な日数の利用ができない場合もありますし、ほかの介護サービスを受けることができなくなってしまう恐れもあります。
実のところ、特別養護老人ホームなどに入所できないため、代わりにショートステイの長期利用をしている要介護者が多いようです。 ショートステイのロング利用をもじって、「ロングショート」という造語もあるほどです。 ショートステイや入所施設を増やさないことには、レスパイトケアも日の目を見ないでしょう。
一方、デイサービスの方は、通所のデイケアも含めると6万以上もの事業所があり、ショートステイに比べると施設数は充実しています。 デイサービスは日帰りですが確実に利用できるので、レスパイトケアとしての利用はますます増えていくでしょう。
自宅にいながらレスパイトケアを受けることができるのただ一つだけのものが、訪問介護です。 その家庭の生活習慣に特化した支援が受けられるのが魅力で、画一的なサービスとなる通所によるサービスとは異なります。 訪問介護の事業所数は3万5千ほどで、デイサービスほどではないのですが、ほぼ全国どこでもサービスを受けることができます。
とは言え、訪問介護は介護業界の中でも特に人手不足が深刻です。 50歳以上のホームヘルパーが全体の7割強であり、高齢化が進んでいます。 その理由は、ホームヘルパーの仕事は、家事支援の割合が高く、家庭を持っている主婦の働き先として向いているためのようです。 今後は、若手の育成が重要なテーマとなってくるでしょう。
医療ケアが必要な人のための「レスパイト入院」についても、レスパイト入院ができる病院は介護施設に比べるとまだまだ少ないのが実情です。 また、基本1週間、最長でも2週間など、病院によって入院の受け入れルールがあります。 現時点では、医療・介護の両面に対応できる施設を探すのは困難なことのようです。
このように、在宅介護の継続を左右するレスパイトケアはだんだん認知されてきてはいるものの、制度やルールとして確立するのはまだまだ先のようです。
レスパイトケアは介護者が介護を続けていくためにも大切なケアであり、介護離職を防ぐためにも重要な防波堤です。
休むことに後ろめたさなどを感じ、介護を一人で抱え込んでしまい、体や精神を蝕んでしまっては元も子もありません。
在宅介護がますます増加する昨今、介護者が急速したりリフレッシュしたりすることに対して後ろめたさを感じることのない社会の実現が望まれます。
レスパイトケアの正しい理解を得ることによって、介護者に休息の大切さを理解させるための仕組みづくりが急務なのです。