2021.06.21
吃音(きつおん)とは何ですかとよく聞かれます。吃音とは話すときにスムーズに言葉を発することが困難な状態のことでいわゆる「どもり」です。20人のうち1人の子どもに、100人のうち1人の大人に吃音があるという報告があり、歴史上の人物や芸能人にもたくさんいると言われています。非常に身近な症状ですね。
吃音の症状は子どもから大人になるにつれて変わってきます。大人になって治る人もいれば治らない人もいるでしょう。ここでは吃音の原因や治し方や吃音に悩む人に配慮しなければならない点などについて紹介します。
目次
吃音とは言葉がスムースに出てこない症状で発達障害の1つです。以下の3つがその主な具体例となります。
「わ、わ、わ、わたしが」、「おと、おと、おと、おとうさん」のように初めの音や言葉の一部を何度か繰り返すものです。「おとうさん、おとうさん、おとうさんがね」のように言葉全体が繰り返されたり、「お、おとうさんが」のように1度だけ繰り返されたりした場合はこれにはあてはまりません。
「わーーーたしがね」のように最初の音を引き伸ばすもので、吃音症以外の子どもにはほとんど見ることができない現象です。ただし、方言で音を引き伸ばすものや相手の名前などでもともとそういう読み方をするものはこれにはあてはまりません。
言いたいことがあるのに、出だしの言葉がなかなか飛び出てこず、顔をゆがめたりして力んで話すような場合です。また、身体を揺らしながら話してみたり、大きく口が開いたまま動かなくなってしまったり、はあはあと荒い息遣いをしながら話すこともあります。
吃音は何が原因ははっきりわかっていません。吃音は①「発達性吃音」(小児期発症流暢症)と②「獲得性吃音」(獲得性吃)に大きく二分されます。「各特性吃音」とは疾患野心的ストレスなどによって発症するものです。吃音症の人の大部分は発達性吃音になります。
言葉がしゃべれるようになる2歳から4歳の頃に10~20人に1人の確率で発症する発達過程の症状で、吃音症の人の9割にもおよぶものです。成長するにつれて吃音が消えていく人も多いようですね。しかしいつまでも治らない場合、考えられる原因は何でしょうか。体質的(あるいは脳や遺伝)なあるいは発達的、もしくは環境的な要因があるとされていますがまだ決定的な研究発表はありません。
「獲得性神経原性吃音」と「獲得性心因性吃音」に獲得性吃音は分けられます。前者は神経学的疾患や脳損傷などにより発症するもので、後者は心的なストレスや外傷体験によるものです。
吃音をめだたなくする方法はいくつかありますが、人によってその原因や症状がまちまちということもあって吃音の根本的な治療法はまだまだ模索中なのです。利用できる治療方法や支援方法は年齢や環境によってもさまざまな違いがあります。人によっても取り組み方は違ってきますし個人差もあるでしょう。
幼児から中学生や高校生くらいまでの人向けには、言語聴覚士が所属している施設や小学校の言葉の教室で指導するもの、大学の教育学部で言葉の相談に応じている相談室などの吃音症のための支援機関があります。また、大人向けには、病院のハビリテーション科や耳鼻咽喉科といった言語聴覚士が指導したり支援したりする施設がありますね。事前にかかりつけの病院や地域の児童発達支援センター、保健センター、日本言語聴覚士協会、各都道府県の言語聴覚士会などにどの病院で診断できるのかチェックしておくのがいいでしょう。
ここで、子どもの吃音の症状の緩和を促がすのに有効とされるトレーニングをご紹介します。 海外で開発された手法「リッカムプログラム」です。最近このプログラム使う医療機関が増えています。まだ日本に入ってきたばかりですが、効果が期待されているものです。このプログラムでは、1日15分間、言葉を詰まらせずに話すことができたらほめてあげる、言葉に詰まったらしかったりせず中立的に指摘するということをだいたい5対1以上の配分で行います。指摘するよりもほめる割合を増やすことがポイントですね。
職場の同僚や家族などに吃音者がいる時は、その人達が話し終わるまでできる限りじっくり聞いてあげましょう。良かれと思って話し方を指導してみたり、相手のしゃべろうとする言葉を察して相手より先に言ってしまったりしないようにします。自分の言おうとしていることを先に言われてしまうことで、違うと思っても訂正することができなかったり話すタイミングをつかめなかったりと吃音者にとってためにならない結果となる場合が多いのです。
しかし、どうしても言葉が出てこない時は、様子をみて聞いている方が代わって語ってあげることも話している側の心理的な負担を軽くする効果もあります。筆談で対話するとか、ワープロなどにタイプしてもらうとか、チェックシートに書いた選択肢を見せて指を差して示してもらうとか、インターネットのチャットを活用するとか、本人にどんな手段がコミュニケーションを取るのに楽か聞いてみるのもおすすめです。相手のペースを守りながら、プレッシャーをかけずに、気楽に話せる関係性や環境を提供してあげましょう。
わが子が吃音の場合は、親や家庭でできることとしては、「繰り返さないで」などと、症状を指摘することは避けることです。今の段階で吃音があることを子どもが自覚しているかいないかに関わらず、会話することへの自信を無くしてしまう恐れがあるからですね。指摘をすることではなく、子どもの話をしっかり聞き楽しそう話に反応してあげることが必要です。そうすれば、子どもは話すことへの自信を深めることができます。
ゆっくりとりゆったりと短い言葉で話してあげるのが吃音を持つ人が言葉を発する時の負担を軽くするための助けとなるのです。平素から親がこのように話しかけることで子どもがそのリズムに従って楽に言葉を発することができるというわけですね。
さらに吃音症の子どもが話しをしている時に子どもを傷つけまいと、話をあえてはぐらかしたりごまかしたりするのはよくありません。吃音では会話することができない話題なのだと思い込んで、1人で悩んでしまったりすることもあるのです。一緒に考えてあげる態度を見せてしっかりと子どもの話を聞いてあげることが重要でしょう。
年齢を重ねるに従って吃音は少なくなってくるものです。特に特別な指導を受けたり支援を受けたりしなくても小学校に入学するぐらいまでには吃音症の子どもの約半数が自然治癒されることが知られています。またそれ以降も学校や言語聴覚士による指導や支援を受けることによって吃音はほとんど発生しなくなるようです。必要以上に吃音を心配することはないのかもしれませんね。
とはいえ、吃音症の人がその症状のためコミュニケ―ションをとることを苦痛に感じて、日常生活の支障をきたしてしまうのはとても残念なことです。まわりの人は、吃音症の人の言葉を広い心でできる限り受け入れ、しっかりコミュニケーションをとるように心がけましょう。