2022.09.01
精神病や精神障害の治療には膨大な費用と時間がかかります。 仕事ができないため収入を得ることもできません。 こういった時に医療費の自己負担額を抑える方法があります。
それが「自立支援医療制度」です。
では、自立支援医療制度の対象となる疾患は何でしょうか、発達障害も対象となるのでしょうか。 また、自立支援制度を受給するための手続きはどうすればいいのでしょうか。
この記事では自立支援制度の概要やメリット・デメリットについて解説します。
目次
自立支援医療制度は全ての精神疾患の中でも、入院以外の継続的な通院治療を必要とするものが対象となります。 通院治療とは、医療機関での受診、薬局、訪問看護、デイケアがこれに含まれ、通常3割負担のところ1割負担に軽減されます。
公的な制度であり、都道府県や指定都市といった自治体が実施するものです。
自立支援医療制度には3つの種類があります。
1.精神通院医療
精神疾患の継続的な通院治療に適用されるものです。
指定した医療機関と薬局でしかこの制度を利用できず、通常3割負担が1割負担に軽減されます。
また、世帯所得や治療内容によって1カ月あたりの自己負担額に上限があります。
精神通院医療は、通院や継続的なデイケアと訪問看護が対象です。
職場に通知が行くことはないので、治療していることを知られたくない場合でも問題ありません。
具体的な疾患名としては、自立支援医療制度の「精神通院医療」、統合失調症などの精神疾患などです。
2更生医療
身体障害の治療に適用されるものです。 身体障害者手帳の交付を受けた18歳以上の障害者が対象で、手術などによる治療で改善が見込まれる場合、その人の所得に従って助成を受けることができます。
対象となる具体的な疾患としては、視覚障害、聴覚または平衡機能の障害、音声機能または言語機能の障害、そしゃく機能の障害、肢体不自由、心臓・腎臓・肝臓・小腸などの障害、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害などで、障害が永続するものです。
自己負担割合は1割ですが、その人の所得に従って医療費の上限があります。
3.育成医療
身体障害者の子どもに適用されるものです。
対象となる障害は、18歳未満の児童、身体障害者福祉法4条の規定する身体上の障害、または疾患を放置すれば将来的に障害を残す疾患、手術などで確実な治療効果が期待できる疾患になります。
具体的な例としては、肢体障害、視覚障害、聴覚・平衡機能障害、音声・言語・そしゃく機能障害、心臓障害、腎臓障害、その他内臓の障害、ヒト免疫不全ウイルスによるものなどです。
各種保険医療費の自己負担分を入院初日分から助成を受けることができますが、世帯全員の前年分の所得税額によっては、自己負担分が発生する場合もあります。
なお、入院室差額料、高度先進医療費、自費材料費などは医療保険の対象外です。
何と言っても、医療費の負担が軽減されることが大きなメリットです。
障害や疾患の治療はどうしても長期間になるため、医療費の負担が大きく膨れあがります。
この治療費の負担を3割から1割に軽減することができます。
もう1つのメリットは、離職後、再就職の準備をするために就労支援施設の利用時の照明として使えることです。
一方、指定された医療機関でしか助成を受けられないのがデメリットの1つです。
さらに、転院時には手続きが必要となります。
なお、自立支援医療制度を受給しているために、生命保険や住宅ローンの利用ができなくなるということは原則としてはありません。 しかし、生命保険の契約する際に持病の有無を申告しなければならず、その結果、生命保険や住宅ローンの契約ができなくなる場合があります。
もう1つのデメリットとして、通院などのたび「自立支援医療受給者証」と「自己負担上限額管理票」を提示しなければなりません。
忘れたら公的医療保険が適用されてしまします。
払い戻しも可能ですが、医療機関によって扱いが違うので、確認が必要です。
さらに、特指定された医療機関でしか助成を受けることができません。
指定自立支援医療機関の中から自分で選択した医療機関や薬局以外では利用ができないというわけです。
くわえて、毎年更新が必要となります。
有効期限は1年間なおで、失効となる3カ月前までに更新の手続きが必要です。
そして、更新には1~2カ月かかるため、早めに主治医に診断書の依頼をしなければなりません。
自立支援制度の申請窓口は住民票のある市区町村の担当窓口です。 担当窓口の名称は自治体によって異なり、保健福祉課、障害福祉課などと呼ばれます。
必要な書類は、以下の通りです。
なお、自治体によっては、下記以外の書類が必要な場合がありますので、事前に確認しておきましょう。
各自治体のホームページなどからダウンロードすることができ、プリントアウトして、必要事項を記入します。
各市区町村の窓口でも入手可能です。
自治体が指定した書式の診断書に主治医に依頼して記入してもらいます。
文書作成費は医療機関によって金額が異なり、かつ保険適用となりませんので注意しましょう。
診断書は、申請時から3カ月以内に作成されたものでなければ無効です。
所得によって必要となる書類が違ってきます。 ・支援給付決定通知書の写し、保護決定通知書の写し、福祉事務所の証明書…生活保護世帯または支援給付受給世帯の場合
・非課税所得証明書、標準負担額減額認定書など・・・市区町村民税非課税世帯の場合
・市区町村民税の課税証明書・・・中間所得層や一定以上の所得の場合
医療保険の被保険者証の原本および写しが必要です。
マイナンバーカードがあれば一番よいのですが、持っていない場合は、「通知カード」と本人であることを確認できる障害者手帳や運転免許証など顔写真付きの公的書類が必要です。
マイナンバーが記載された住民票の写しまたは住民票記載事項証明書でもかまいませんがこの場合も顔写真付きの公的な書類が必要となります。
なお、18歳未満の人が申請者の場合は、保護者のマイナンバーが分かる書類が必要です。
書類がそろったら以下の順で申請手続きを行います。
1.主治医に相談、記入してもらう
主治医に自立支援医療の適用について相談し、申請の許可が出たら所定の申請書に記入してもらいましょう。
2.通院する医療機関を指定
「指定自立支援医療機関」の中から通院する医療機関を決めます。
3.住所のある市区町村の窓口で申請
市区町村担当窓口で必要な書類一式を提出。
4.「自立支援医療受給者証」と「自己負担上限額管理票」の交付 申請が認められたら、「自立支援医療受給者証」と「自己負担上限額管理票」が交付されます。
事前に指定した医療機関でこれらを提示すれば自立支援医療 の適用を受けることが可能です。
注意事項として、自立支援医療受給者証が交付されるまで1~2カ月かかることがあります。
その間は、医療機関にもよりますが、「申請書の控え」などを提出することで、自立支援医療が適用される可能性があります。 申請書の控えでは適用されない場合でも、受給者証交付後に払い戻しの手続きを行うことが可能です。
これまで解説してきましたとおり、自立支援医療には3種類があり、それぞれ適用される病気や障害に違いがあることがおわかりになったと思います。 また、医療費の負担割合とその上限があること、さらに申請方法についても理解できたのではないでしょうか。
自立支援医療は、障害の治療や改善に長い期間を要するために、医療費負担が大きくなることの対策として設けられた公的な支援制度です。
自立支援制度を含めて利用できる制度は遠慮しないで大いに活用すべきでしょう。
ぜひ、この自立支援医療制度を積極的に利用して金銭的な心配をすることなく、十分な医療が受けられるようにしましょう。